CKD治療でこんなこと思ったことはありませんか?(静止画)

サイトへ公開:2025年11月27日 (木)

最近、eGFRが60mL/min/1.73m2を切った2型糖尿病のある方が増えてきたな。でも、蛋白尿はみられていない方も結構いるな。蛋白尿がみられないうちは、慢性腎臓病(CKD)治療はまだ不要だろう。今の治療のまま様子を見よう。

先生!! 実はこのようなデータがあります

ご紹介するデータの要点

アルブミン尿が正常でもeGFRが低下していると、腎・心血管イベント発現リスクが高くなる
eGFRスロープが負の方向に急峻であると、腎イベント等のリスクが高くなる

2型糖尿病のある方では、アルブミン尿が正常でもeGFRが低下していると、腎・心血管イベント発現リスクが高くなる

2型糖尿病のある方では、アルブミン尿が正常でもeGFRが60未満の場合、重篤な腎イベントのリスクが4.1倍高くなります。
蛋白尿だけでは腎イベントリスクは判断できないことが、国内のデータで報告されています。
こちらは、アルブミン尿が正常な2型糖尿病のある方を対象に、eGFR<60mL/min/1.73m2とeGFR≧60mL/min/1.73m2の2群に分け、予後を検討した後ろ向き観察研究です。
このデータが示すとおり、アルブミン尿が正常であってもeGFR<60mL/min/1.73m2になると、将来、腎機能が半分に低下、または腎代替療法が必要になるリスクが4.1倍に、そして、今は出ていない蛋白尿が新たに出現するリスクが2.1倍に上昇することが報告されました。

そして、問題は腎イベントリスクだけではありません。eGFRの低下は心臓にも影響を与えます。

こちらは、アルブミン尿が正常な2型糖尿病のある方を対象にeGFR別に予後を検討した前向きコホート研究です。
このデータが示すとおり、eGFR 30~59mL/min/1.73m2の群の心血管イベント発現リスクは、eGFR≧90mL/min/1.73m2の群の3.05倍だったことが報告されました。

この結果はまさに心腎連関を表すものであり、eGFRの低下が、いかに心臓にとっても無視できないリスクであるかを示しています。

2型糖尿病のある方では、eGFRスロープが負の方向に急峻であると、腎イベント等のリスクが高くなる

これまでeGFRの低下がもたらすリスクを確認してきました。最後に、その低下速度、すなわちeGFRスロープの重要性を示すデータをご紹介します。

本試験では、2型糖尿病のある方を対象に、eGFRスロープの負の値が大きい群(全体の25%と規定)(<-1.63mL/min/1.73m2/年)と中央値付近の群(全体の50%と規定)(-1.63~0.33mL/min/1.73m2/年)で、主要腎イベント(維持透析、腎移植、腎疾患による死亡)、主要大血管イベント(非致死的または致死的心筋梗塞、非致死的または致死的脳卒中、その他の心血管死)、全死亡のリスクを比較しました。

結果として、eGFRスロープの負の値が大きい群では中央値付近の群と比べて、主要腎イベントのリスクが3.86倍になり、さらに主要大血管イベントのリスクが1.26倍、全死亡のリスクが1.38倍に上ったことが報告されました。

なるほど…。「蛋白尿が出ていないから、まだ大丈夫」と考えていたけど、その間にも、心腎双方のリスクがこれほど増大している可能性があったとは…。
これからは、蛋白尿がみられていなくても、eGFRの低下による心腎リスクを見据えて、早期に治療介入を検討したほうが良いかもしれないですね。
そして、eGFRスロープも確認し、それぞれの患者さんにあった治療方針を考える際の参考にしますね。

EMPA-KIDNEY試験

ここからはCKD※1治療薬のひとつであるSGLT2阻害薬ジャディアンスの有効性および安全性を検討した国際共同第Ⅲ相試験 EMPA-KIDNEY試験についてご紹介します。
※1 ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く

試験概要

本試験は、腎疾患進行のリスクのあるCKD患者6,581例を対象に、ジャディアンス10mgを1日1回経口投与した時の腎疾患進行または心血管死の初回発現までの期間に対する有効性および安全性をプラセボと比較検討しました。

主要評価項目は、腎疾患進行または心血管死の初回発現までの期間でした。その他の評価項目、安全性評価項目、解析計画はご覧のとおりです。

本試験は、CKDの適応取得を目的とした大規模臨床試験において初めて正常アルブミン尿の患者を組み入れ、eGFR値20以上の患者が登録された試験です。

また、心血管疾患の既往の有無や併用薬にかかわらず、幅広い患者背景のCKD患者が組み入れられました。

有効性

全体集団において、ジャディアンス10mgの投与により、主要評価項目(腎疾患進行または心血管死)のリスクは27%低下しました(p<0.0001、Cox回帰モデル)。また、RAS阻害薬使用群においては29%低下しました(p<0.0001、名目上のp値、Cox回帰モデル)。

その他の評価項目(探索的)としてeGFRスロープについて検討した結果、eGFRはご覧のとおり推移しました。

ジャディアンス10mg群はプラセボ群と比べて、全期間※2、慢性期※3の両方でeGFRスロープを有意に抑制しました(いずれもp<0.0001、名目上のp値、shared parameterモデル)。

※2 ベースラインから最終フォローアップ来院まで
※3 2ヵ月目の来院から最終フォローアップ来院まで

また、このeGFRスロープについて、ベースラインのUACR別のサブグループ解析が行われました。
その結果、UACRにかかわらず、ジャディアンス10mg群はプラセボ群と比べて、慢性期におけるeGFRスロープを有意に抑制しました(正常群:p=0.0008、微量および顕性アルブミン尿群:各p<0.0001、いずれも名目上のp値、shared parameterモデル)。

安全性

ジャディアンス10mg群の治験薬投与期間中央値21.82ヵ月での有害事象発現割合は、43.9%(1,444/3,292例)でした。
主な有害事象は、ジャディアンス10mg群で痛風231例(7.0%)、コロナウイルス感染98例(3.0%)、急性腎障害93例(2.8%)等、プラセボ群で痛風266例(8.1%)、急性腎障害117例(3.6%)、コロナウイルス感染107例(3.3%)等でした。
重篤な有害事象は、ジャディアンス10mg群でコロナウイルス感染98例、急性腎障害93例、血中カリウム増加76例等、プラセボ群で急性腎障害117例、コロナウイルス感染107例、血中カリウム増加87例等でした。
投与中止、死亡に至った有害事象はご覧のとおりでした。

本日の内容を先生のCKD診療にお役立ていただけますと幸いです

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