HER2遺伝子変異陽性肺癌治療薬 ヘルネクシオス®の有効性・安全性とQOL(静止画)

サイトへ公開:2026年07月24日 (金)

ご監修:乾 直輝 先生(浜松医科大学 臨床薬理学講座 教授)

HER2遺伝子変異陽性非小細胞肺癌において、標的治療薬としてヘルネクシオス®が登場し、生存期間の延長が期待されます。治療にあたっては、臨床効果に加えて、患者さんが治療において何を望んでいるか、何を重視しているかについても考慮することが重要です。
本コンテンツでは、非小細胞肺癌の治療ゴール及びBeamion LUNG-1試験の第Ib相1,2)におけるヘルネクシオス®の有効性・安全性とQOLについて、浜松医科大学 臨床薬理学講座 教授 乾 直輝 先生にご解説いただきました。

1)社内資料:国際共同第I相試験(Beamion LUNG-1)[承認時評価資料]
2)Heymach JV. et al.: N Engl J Med 2025; 392(23): 2321-2333. 本試験はベーリンガーインゲルハイム社の支援により行われた。

HER2遺伝子変異陽性非小細胞肺癌の予後(海外データ)

HER2遺伝子変異陽性非小細胞肺癌患者のOS中央値は1.6年であり、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌患者と比較して予後不良であることが報告されています。
これは、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤のような標的治療薬がなかったことが一因であると考えられます。現在は、標的治療薬としてチロシンキナーゼ阻害剤であるヘルネクシオス®が登場し、生存期間の延長が期待されます。

【非小細胞肺癌の治療ゴール】
治療選択における患者視点-生存期間の延長とQOL-

治療にあたっては、臨床効果に加えて、患者さんが治療において何を望んでいるか、何を重視しているかについても考慮することが重要です。 
ESMOの患者向けガイドラインでは、「IV期非小細胞肺癌における全身治療の目的は、QOLの改善と生存期間の延長である。」と記載されています。 
患者さんは治療選択において、「どれだけ長く生きるか」だけでなく、「どのように生活できるか」も重視しており、臨床効果に加えて、日常生活への影響に目を向けることも重要な視点となり得ます。

医師と患者が重視する治療ゴール(海外データ)

海外の調査では、非小細胞肺癌の治療選択において、医師は臨床効果(OS/PFS/DOR)、患者さん及び家族・介護者の方は生存期間の延長に続いて、QOLを重要な判断基準として位置づけていることが報告されています。

このような背景を踏まえて、ここからは、ヘルネクシオス®の有効性・安全性とQOLについてご紹介します。

肺癌診療ガイドラインにおけるヘルネクシオス®の位置づけ

これまで二次治療以降の推奨は一剤のみでしたが、肺癌診療ガイドライン2025年版にヘルネクシオス®が掲載されました。HER2遺伝子変異陽性肺癌において、初めてのチロシンキナーゼ阻害剤が新たな選択肢として加わりました。ガイドラインでは、「二次治療以降でゾンゲルチニブ単剤療法を行うよう強く推奨する。」と記載されています。

ヘルネクシオス®の効能又は効果、用法及び用量

ヘルネクシオス®は、Beamion LUNG-1試験において有効性と安全性が検討され、日本では2025年9月に承認を取得しました。

ヘルネクシオス®の作用機序

ヘルネクシオス®は、経口投与可能な新規のHER2チロシンキナーゼ阻害剤です3)
エクソン20挿入変異等を有するHER2のチロシンキナーゼ活性を阻害し、下流のシグナル伝達を阻害することにより、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられています4)
HER2選択性を高めた特性により、ヘルネクシオス®は、臨床においてもHER2遺伝子変異陽性非小細胞肺癌の腫瘍増殖及び疾患進行を抑制することが可能となります。

3)Heymach JV. et al.: N Engl J Med 2025; 392(23): 2321-2333.
4)ヘルネクシオス®錠60mg 電子添文 2025年11月改訂(第2版)

ヘルネクシオス®の有効性と安全性を評価した「国際共同第I相試験Beamion LUNG-1試験」をご紹介します。

試験概要

Beamion LUNG-1試験の第Ib相(用量拡大パート)では、進行/転移性のHER2変異陽性非小細胞肺癌患者を対象に、ヘルネクシオス®の有効性と安全性を評価しました。
同試験では、日本を含む18ヵ国で241例が登録され、そのうち日本人患者は26例でした。
同試験の第Ib相用量拡大パートのうちコホート1では、まず初めに用量最適化相として、治療歴のあるHER2変異陽性非小細胞肺癌患者を、ヘルネクシオス®120mg群又は240mg群にランダムに割り付け、治療を実施しました。
その後、用量最適化相のデータを踏まえて、120mgを推奨用量とし、コホート1を含むすべてのコホートで240mg群への組入れは中止となりました。

 

試験結果

主要評価項目である客観的奏効率(ORR※1)は66.7%(50/75例、97.5%CI:53.8-77.5)と事前に規定された基準(ORR 30%)を上回りました(片側p<0.0001、検証的な解析結果、1標本z検定)。
また、副次評価項目である病勢コントロール率(DCR※2)は92.0%でした。
※1:ORR=CR+PR、※2:DCR=CR+PR+SD

FDAの指示に基づき、コホート1の全患者の6ヵ月以上の奏効期間フォローアップデータ及び3ヵ月安全性データを更新するため、追加解析が実施されました。
追加解析の結果、客観的奏効率(ORR)は70.7%(53/75例、95%CI:59.6-79.8)でした。

副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は12.4ヵ月でした。

その他の評価項目である腫瘍縮小率(Waterfall plot)は以下のとおりで、腫瘍縮小率の中央値は-43%(範囲:-100~22)でした。

腫瘍縮小率の推移(Spider plot)は以下のとおりでした。

ヘルネクシオス®との因果関係ありと判断された有害事象は75例中73例(97.3%)に認められました。
主な有害事象は下痢(54.7%)、AST増加(24.0%)、発疹(22.7%)、ALT増加(21.3%)などでした。

ヘルネクシオス®との因果関係ありと判断された重篤な有害事象は3例(4.0%)に認められ、ALT増加、AST増加が報告されました。
ヘルネクシオス®との因果関係ありと判断された死亡に至った有害事象は報告がありませんでした。

中止に至った有害事象は2例(2.7%)に認められ、ALT増加、AST増加、血中ALP増加、GGT増加及び発熱が報告されました。
休薬に至った有害事象は25例(33.3%)に認められ、2例以上にみられた有害事象はAST増加、駆出率減少、発疹、ALT増加及び嘔吐が報告されました。
減量に至った有害事象は5例(6.7%)に認められ、AST増加、ALT増加、好中球数減少、血中クレアチンホスホキナーゼ増加、GGT増加、高トランスアミナーゼ血症及び薬物性肝障害の疑いが報告されました。

つづいて、QOLに関連する患者報告アウトカムの結果をご紹介します。

副次評価項目であるEORTC QLQ-C30(IL19)身体機能ドメインは、5つの項目からなる機能スケールであり、スコア増加が改善を示します。
ベースラインの平均スコアは77.9(SD:24.68)でした。ベースラインからの増加量は、サイクル5の1日目で9.6(調整済み平均変化量、SE:1.64)、サイクル9の1日目で7.8(調整済み平均変化量、SE:2.28)でした。

NSCLC-SAQ(非小細胞肺癌症状評価質問票)は、進行性非小細胞肺癌の5つの症状領域を評価するための7項目の質問票であり、スコア減少が改善を示します。
ベースラインの平均スコアは7.2(SD:4.52)でした。ベースラインからの減少量は、サイクル5の1日目で−3.9(調整済み平均変化量、SE:0.46)、サイクル9の1日目で−3.4(調整済み平均変化量、SE:0.53)でした。

EORTC IL46は、全体的な副作用の影響を評価する単一項目の質問であり、スコア減少が改善を示します。 
ベースラインの平均スコアは1.3(SD:0.71)でした。ベースラインからの増加量は、サイクル5の1日目で0.3(調整済み平均変化量、SE:0.11)、サイクル9の1日目で0.1(調整済み平均変化量、SE:0.10)でした。

【乾先生のお言葉】

非小細胞肺癌の治療選択において、医師は臨床効果、患者さん及び家族・介護者の方は生存期間の延長に続いて、QOLを重要な判断基準として位置づけています。
そのため、患者さんがQOLを維持しながら治療と日常生活を両立し、可能な限りこれまでと変わらない日々を過ごすことができるように、患者さんの希望も踏まえながら、有効性、安全性、QOLなどを総合的に考慮した薬剤選択が重要であると考えます。
Beamion LUNG-1試験の第Ib相の患者報告アウトカムの結果から、ヘルネクシオス®はQOLスコアの改善が期待できます。
本コンテンツが、先生方の日常診療における治療方針決定の一助となれば幸いです。

本ページは会員限定ページです。
ログインまたは新規会員登録後にご覧いただけます。

会員専用サイト

医療関係者のニーズに応える会員限定のコンテンツを提供します。

会員専用サイトにアクセス​

より良い医療の提供をめざす医療関係者の皆さまに​

  • 国内外の専門家が解説する最新トピック
  • キャリア開発のためのソフトスキル
  • 地域医療と患者さんの日常を支える医療施策情報

などの最新情報を定期的にお届けします。​

P-Mark 作成年月:2026年7月