日本人のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌の生存期間
サイトへ公開:2025年01月29日 (水)
EGFR-TKIによるシークエンス治療の可能性について、ご紹介させていただきます。
長期の生存を目指す上で、1次治療だけではなく、2次治療以降も含めた治療選択が重要であると考えられます。
今回は、1次治療としてのEGFR-TKおよび2次治療の選択が生存期間(OS)に及ぼす影響についてご紹介します。
国際共同第Ⅲ相比較試験LUX-Lung 3試験1)(検証試験)
本試験では、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌を対象に、1次治療におけるジオトリフ単独療法とPEM+CDDP併用化学療法の有効性と安全性が検討されました。

主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の中央値は、ジオトリフ群11.1ヵ月、PEM+CDDP群6.9ヵ月であり、ジオトリフ投与によるPFSの有意な延長が検証されました(p=0.0004、両側層別ログランク検定)。

日本人サブグループ解析2)におけるOS中央値は、ジオトリフ群46.9ヵ月、PEM+CDDP群35.8ヵ月でした。

ジオトリフ投与終了後の2次治療への移行率は89.6%でした。後治療内容と治療別の割合はご覧の通りです。なお、本解析のデータカットオフ時点において、オシメルチニブ投与例はありませんでした。

副作用は、ジオトリフ群229例中228例、99.6%、PEM+CDDP群111例中106例、95.5%に認められました。主な副作用は、ジオトリフ群で下痢、発疹/ざ瘡、口内炎、爪の異常など、PEM+CDDP群で悪心、食欲減退などでした。

EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者におけるEGFR-TKI治療シークエンスのリアルワールドデータ3)
国内で実施された単施設後ろ向き観察研究をご紹介いたします。
EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者における1次治療(1L)としての第一/第二世代(1G/2G)EGFR-TKIとオシメルチニブの実臨床での治療成績が評価され、後ろ向き研究の潜在的選択バイアスを最小化するために傾向スコアマッチング(PSM)が行われました。
さらに、最適なEGFR-TKI治療戦略を検討するため、1L 1G/2G EGFR-TKI後のT790Mの状態とオシメルチニブ二次治療(2L)が全生存期間(OS)にどのように影響するかを検討するための探索的解析が行われました。
本研究の限界として下記が挙げられます。
・単一施設での後ろ向き研究によるバイアスの可能性がある。
・1L オシメルチニブ群の追跡期間は、1L 1G/2G EGFR-TKI群よりも短かった。そのため、ランドマーク解析を行った
が、Immortal time biasを完全には排除することができなかった。
・T790M変異の潜在的な予測因子(TP53遺伝子変異や全ゲノム倍加の有無)をPSMに含めることができなかった。
・1L 1G/2G EGFR-TKI治療後に2L オシメルチニブを投与しなかった患者の中には、T790M変異検査ができなかった
患者も含まれている。


主要評価項目であるOSの中央値は、1L オシメルチニブ群は33.7ヵ月、1L 1G/2G EGFR-TKI群は41.8ヵ月で、両群間に有意差はみとめられませんでした[ログランク検定;名目上のp=0.62、HR 0.92(95%CI 0.65-1.29)]。
PSM後のOS中央値は、1L オシメルチニブ群は33.7ヵ月、1L 1G/2G EGFR-TKI群は46.6ヵ月で、両群間に有意差はみとめられませんでした[ログランク検定;名目上のp=0.95、HR 0.99(95%CI 0.67-1.45)]。

12ヵ月ランドマーク解析によるOS中央値は1L-Osiで34.4ヵ月、2L-Osiで63.8ヵ月、No-Osiで22.5ヵ月でした。
また、PSM後の12ヵ月ランドマーク解析によるOS中央値は1L-Osiで34.4ヵ月、2L-Osiで51.8ヵ月、No-Osiで29.3ヵ月でした。

なお、本研究では安全性情報は収集されていません。

今回ご紹介した内容が、先生の肺癌診療のお役にたてましたら幸いです。
【引用】
- Jones H. et al.:社内資料 国際共同第Ⅲ相試験(LUX-Lung 3)[承認時評価資料]
- Kato T, et al. Cancer Sci 2015;106(9):1202-1211.
- Uehara Y et al: ESMO Real World Data and Digital Oncology, Published online July 26, 2024