この患者さんの治療についてどのように考えますか?ARBで治療中の高血圧患者におけるCKD診療(静止画)

サイトへ公開:2026年01月29日 (木)

このような患者さんに対する今後の治療方針について、先生のお考えに最も近いものをお選びください

 選択肢

①現在の治療を継続する(SGLT2阻害薬の追加を検討しない)
②SGLT2阻害薬の追加を検討する

①「現在の治療を継続する(SGLT2阻害薬の追加を検討しない)」を選択した場合…

現在の治療を継続する(SGLT2阻害薬の追加を検討しない)理由として先生のお考えに最も近いものをお選びください

・腎機能ステージG3a/A2だから
・2型糖尿病を併発していないから
・薬剤追加による薬剤費、薬剤数の負担が増えるから

「腎機能ステージG3a/A2だから」を選択した場合

今回の患者さんはeGFR 55mL/min/1.73m2ですが、先生は腎機能の低下による心血管・腎イベントリスクはいつから上昇すると思いますか?

eGFRと心不全の関連を検討した研究では、eGFRが75mL/min/1.73m2に低下した段階で心不全のハザード比が上昇し始め、45mL/min/1.73m2まで低下すると2を超えたことが報告されています。
また、eGFRの低下および蛋白尿は、それぞれ独立した心不全リスク因子であることも報告されています。
蛋白尿区分別の心不全発現リスクを検討した研究では、蛋白尿が1+以上になると、蛋白尿(-)と比較して、心不全発現リスクが1.59倍になることが報告されています。

さらに、蛋白尿およびeGFRの低下による透析導入リスクを検討した日本の研究では、糖尿病の有無にかかわらず、蛋白尿(+)とeGFR<60mL/min/1.73m2は透析導入の独立した予測因子だったことが報告されています。

今回の患者さんは高血圧のためARBを服用中ですが、これに加えてCKD治療としてSGLT2阻害薬という選択肢があります。
このARBとSGLT2阻害薬はいずれも糸球体内圧を低下させると考えられていますが、その作用機序は異なります。
ARBは、収縮していた輸出細動脈を改善することで、糸球体内圧を低下させることが期待されます。一方、SGLT2阻害薬は、拡張していた輸入細動脈を改善することで、糸球体への血液の過剰な流入を抑え、糸球体内圧を低下させることが期待されます。
このように、ARBとSGLT2阻害薬は異なる作用機序で、糸球体内圧を低下させると考えられています。

「2型糖尿病を併発していないから」を選択した場合

ここからは、糖尿病の有無別にeGFRの低下による心血管・腎イベントリスクを検討した研究について見てみましょう。

まず、こちらの研究では糖尿病の有無にかかわらず、eGFRの低下そのものが、心血管死のリスクを上昇させることが報告されています。
具体的には、糖尿病合併群ではCKDステージがG3a、G3bへと移行するのに従い、G1と比べて、心血管死のリスクが1.32倍、2.08倍に増加しました。一方、糖尿病非合併群ではG3a、G3bへと移行するのに従い、G1と比べて、心血管死のリスクが1.48倍、2.10倍に増加しました。

さらに、eGFRの低下は、糖尿病の有無にかかわらず透析導入のリスクにもなります。
蛋白尿とeGFRの低下による透析導入リスクを検討した日本の研究では、糖尿病非合併群においても、蛋白尿(+)とeGFR<60mL/min/1.73m2が透析導入の独立した予測因子だったことが報告されています。

以上のように糖尿病を併発していない場合でも、eGFRの低下は心血管・腎イベントリスクにつながることが報告されています。では、将来のイベントリスクを考慮したCKD患者への治療選択肢にはどのようなものがあるのでしょうか?

そのひとつにSGLT2阻害薬があります。
このSGLT2阻害薬とARBはいずれも糸球体内圧を低下させると考えられていますが、その作用機序は異なります。
ARBは、収縮していた輸出細動脈を改善することで、糸球体内圧を低下させることが期待されます。一方、SGLT2阻害薬は、拡張していた輸入細動脈を改善することで、糸球体への血液の過剰な流入を抑え、糸球体内圧を低下させることが期待されます。
このように、ARBとSGLT2阻害薬は異なる作用機序で、糸球体内圧を低下させると考えられています。

「薬剤追加による薬剤費、薬剤数の負担が増えるから」を選択した場合

先生もご存じのとおり、CKDの進展抑制や心血管合併症の予防のためには、複数の薬剤による治療が必要となる場合があります1,2)

一方で、その結果CKDではポリファーマシーが多いとされており、薬剤の追加による患者への負担は治療選択において考慮すべき点のひとつと考えられます1,2)
だからこそ、このポリファーマシーを回避するには、機械的な減薬ではなく、患者個々に薬剤の必要性やリスクを評価し、処方を適正化することが大切です1,2)

そのような治療の適正化を図る上で、CKD患者の予後を長期的に見据えた際には、腎機能の低下による末期腎不全の回避とともに、心不全リスクを考慮することも大切だと考えられるのではないでしょうか。
CKDでは心血管疾患に起因する死亡率が高いため、CKD患者の多くは腎不全に至る前に死亡するとの報告があります3)
実際にCKDの転帰を調査した研究では、透析導入率よりも死亡率の方が高い傾向がみられました3)。さらに、死亡患者ではうっ血性心不全、冠動脈疾患、糖尿病、貧血の有病率が高かったことが報告されています3)

1) NeuenNephrol BL, et al, Dial Transplant. 2025;40(Suppl 1):i59‒i69.
COI:著者にBoehringer Ingelheimから資金提供等を受けている者が含まれる
2) Hall RK, et al. Nat Rev Nephrol. 2024;20(6):386-401.
COI:著者にBoehringer Ingelheimから資金提供等を受けている者が含まれる
3) Keith DS, et al. Arch Intern Med. 2004;164(6):659-663.

では、eGFRの低下および蛋白尿は、どの程度心不全リスクに影響を及ぼすのでしょうか?

eGFRと心不全の関連を検討した研究では、eGFRが75mL/min/1.73m2に低下した段階で心不全のハザード比が上昇し始め、45mL/min/1.73m2まで低下すると2を超えたことが報告されています。
また、蛋白尿区分別の心不全発現リスクを検討した研究では、蛋白尿が1+以上になると、蛋白尿(-)と比較して、心不全発現リスクが1.59倍になることが報告されています。

EMPA-KIDNEY試験

ここからは、SGLT2阻害薬のひとつであるジャディアンスの有効性および安全性を検討した国際共同第Ⅲ相試験 EMPA-KIDNEY試験についてご紹介します。
本試験では、全体集団に加え、RAS阻害薬使用有無別の解析も行われました。

本試験は、腎疾患進行のリスクのあるCKD患者6,581例を対象に、ジャディアンス10mgを1日1回経口投与した時の腎疾患進行または心血管死の初回発現までの期間に対する有効性および安全性をプラセボと比較検討しました。

主要評価項目は、腎疾患進行または心血管死の初回発現までの期間でした。その他の評価項目、安全性評価項目、解析計画はご覧のとおりでした。

本試験は、CKDの適応取得を目的とした大規模臨床試験において初めて蛋白尿区分A1を組み入れ、eGFR値20以上の患者が登録された試験です。また、糖尿病合併、心血管疾患の既往、併用薬の有無にかかわらず、幅広い患者背景のCKD患者が組み入れられました。
なお、本試験においてRAS阻害薬使用中の患者は85.2%でした。

有効性

本試験では、全体集団において、ジャディアンス10mgの投与により主要評価項目(腎疾患進行または心血管死)のリスクが27%低下しました(99.83%CI:0.59-0.89、p<0.0001、Cox回帰モデル)(検証的な解析結果)。
また、RAS阻害薬使用有無別の解析を行った結果、RAS阻害薬使用群においては29%低下しました(95%CI:0.62-0.82、p<0.0001、名目上のp値、Cox回帰モデル)。

本試験ではその他の評価項目(探索的)としてeGFRスロープについて検討しました。
eGFRスロープとは、eGFRの年間変化率の指標であり、負の値が小さいほど、1年あたりのeGFRの低下が少ないことを示します。
その結果、ジャディアンス10mg群はプラセボ群と比べて、全期間※1、慢性期※2の両方でeGFRスロープを有意に抑制しました(いずれもp<0.0001、名目上のp値、shared parameterモデル)。
なお、eGFRのベースラインからの変化量の経時推移はご覧のとおりでした。 
※1 ベースラインから最終フォローアップ来院まで
※2 2ヵ月目の来院から最終フォローアップ来院まで

慢性期のeGFRスロープについては、ベースラインの糖尿病の有無、eGFR、UACR別および無作為化時のRAS阻害薬の使用別のサブグループ解析が行われ、結果はご覧のとおりでした。

安全性

ジャディアンス10mg群の治験薬投与期間中央値21.82ヵ月での有害事象発現割合は、43.9%(1,444/3,292例)でした。
主な有害事象は、ジャディアンス10mg群で痛風231例(7.0%)、コロナウイルス感染98例(3.0%)、急性腎障害93例(2.8%)等、プラセボ群で痛風266例(8.1%)、急性腎障害117例(3.6%)、コロナウイルス感染107例(3.3%)等でした。
重篤な有害事象は、ジャディアンス10mg群でコロナウイルス感染98例、急性腎障害93例、血中カリウム増加76例等、プラセボ群で急性腎障害117例、コロナウイルス感染107例、血中カリウム増加87例等でした。
投与中止、死亡に至った有害事象はご覧のとおりでした。

②「SGLT2阻害薬の追加を検討する」を選択した場合…

先生のご選択のとおり、『CKD診療ガイド2024』では、CKD患者に対しては、糖尿病非合併であっても蛋白尿がみられる場合、SGLT2阻害薬を開始するとされています。

そして、治療による効果の評価や腎機能の予後を予測する上で、近年有用と考えられているのが「eGFRスロープ」という指標です。
eGFRスロープとは、eGFRの年間変化率の指標であり、負の値が小さいほど、1年あたりのeGFRの低下が少ないことを示します。このeGFRスロープの低下が、治療介入によって0.5~1.0mL/min/1.73m2/年緩やかになると、腎疾患進行が抑制される可能性があるとされています。
また、早期CKD患者において、eGFRスロープを緩やかにすることは、末期腎不全の進展抑制のサロゲート(代替)エンドポイントになりうると提唱されています。

EMPA-KIDNEY試験

CKDでは、日本人を含むアジア人において、欧米人と比較してeGFR低下速度が速く、末期腎不全(腎代替療法)への進行リスクが高いという報告もあることから1)、国際共同試験の全体集団の結果だけでなく、日本人における有効性および安全性も治療選択の一助となるのではないでしょうか。
ここからは、SGLT2阻害薬のひとつであるジャディアンスの有効性および安全性を検討した国際共同第Ⅲ相試験 EMPA-KIDNEY試験についてご紹介します。
本試験では、全体集団に加え、事前規定された日本人集団の解析も行われました。

1) Barbour SJ, et al. Nephrol Dial Transplant. 2010;25(11):3663-3672.

本試験は、腎疾患進行のリスクのあるCKD患者6,581例を対象に、ジャディアンス10mgを1日1回経口投与した時の腎疾患進行または心血管死の初回発現までの期間に対する有効性および安全性をプラセボと比較検討しました。また、対象患者のうち584例が日本人でした。

主要評価項目は、腎疾患進行または心血管死の初回発現までの期間でした。その他の評価項目、安全性評価項目、解析計画はご覧のとおりであり、有効性および安全性の各評価項目について日本人集団における解析が事前規定されていました。

本試験は、CKDの適応取得を目的とした大規模臨床試験において初めて蛋白尿区分A1を組み入れ、eGFR値20以上の患者が登録された試験です。また、糖尿病合併、心血管疾患の既往、併用薬の有無にかかわらず、幅広い患者背景のCKD患者が組み入れられました。

有効性

本試験では、全体集団において、ジャディアンス10mgの投与により主要評価項目(腎疾患進行または心血管死)のリスクが27%低下しました(99.83%CI:0.59-0.89、p<0.0001、Cox回帰モデル)(検証的な解析結果)。
また、RAS阻害薬使用有無別の解析を行った結果、RAS阻害薬使用群においては29%低下しました(95%CI:0.62-0.82、p<0.0001、名目上のp値、Cox回帰モデル)。

さらに日本人集団では、ジャディアンス10mgの投与により、主要評価項目のリスクが56%低下しました(95%CI:0.28-0.69、p=0.0004、名目上のp値、Cox回帰モデル)。
日本人集団および全体集団における、無作為化時のRAS阻害薬使用別の主要評価項目の結果はご覧のとおりでした。

本試験では、その他の評価項目(探索的)としてeGFRスロープについて検討されました。
その結果、ジャディアンス10mg群はプラセボ群と比べて、全期間※1、慢性期※2の両方でeGFRスロープを有意に抑制しました(いずれもp<0.0001、名目上のp値、shared parameterモデル)。
なお、eGFRのベースラインからの変化量の経時推移はご覧のとおりでした。 
※1 ベースラインから最終フォローアップ来院まで
※2 2ヵ月目の来院から最終フォローアップ来院まで

また、日本人集団においても、ジャディアンス10mg群はプラセボ群と比べて、全期間、慢性期の両方でeGFRスロープを有意に抑制しました(全期間:p=0.0012、慢性期:p<0.0001、いずれも名目上のp値、shared parameterモデル)。

安全性

全体集団におけるジャディアンス10mg群の治験薬投与期間中央値21.82ヵ月での有害事象発現割合は、43.9%(1,444/3,292例)でした。
主な有害事象は、ジャディアンス10mg群で痛風231例(7.0%)、コロナウイルス感染98例(3.0%)、急性腎障害93例(2.8%)等、プラセボ群で痛風266例(8.1%)、急性腎障害117例(3.6%)、コロナウイルス感染107例(3.3%)等でした。
重篤な有害事象は、ジャディアンス10mg群でコロナウイルス感染98例、急性腎障害93例、血中カリウム増加76例等、プラセボ群で急性腎障害117例、コロナウイルス感染107例、血中カリウム増加87例等でした。
投与中止、死亡に至った有害事象はご覧のとおりでした。

また、日本人集団におけるジャディアンス10mg群の治験薬投与期間中央値26.12ヵ月での有害事象発現割合は、37.7%(110/292例)でした。
主な有害事象は、ジャディアンス10mg群で低血糖9例(3.1%)、白内障手術8例(2.7%)、脱水6例(2.1%)等、プラセボ群で白内障手術15例(5.1%)、動静脈シャント手術、血中クレアチニン増加各9例(3.1%)等でした。
重篤な有害事象は、ジャディアンス10mg群で白内障手術8例、末期腎疾患5例、動静脈シャント手術4例等、プラセボ群で白内障手術15例、動静脈シャント手術、血中クレアチニン増加各9例等でした。
投与中止、死亡に至った有害事象はご覧のとおりでした。

今回は、CKDの早期治療介入の重要性と、ジャディアンスの有効性および安全性を検討した国際共同第Ⅲ相試験 EMPA-KIDNEY試験についてご紹介しました。
CKDの治療選択肢のひとつとしてSGLT2阻害薬 ジャディアンス10mgをぜひご検討ください。
※ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く

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