2型糖尿病があり、腎機能が低下した正常アルブミン尿の方に対する10年後の心腎イベントを考慮したマネジメントとは
サイトへ公開:2025年04月28日 (月)
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2型糖尿病のある方では、正常アルブミン尿であってもeGFRの低下が心腎イベントのリスクになります。今回は、心腎イベントリスクと患者背景を踏まえたジャディアンスのエビデンスを紹介します。

2型糖尿病があり、腎機能が低下している方に対して、
どのような将来のリスクを考慮されますか

図は、2型糖尿病と高血圧を併発し、DPP4阻害薬とARBを使用中の患者さんの例をお示ししています。eGFR 51mL/min/1.73m2、尿蛋白陰性、UACR 20mg/gCrの場合、患者さんの10年後の腎機能等はどのように変化すると考えられますか。
2型糖尿病のある方の場合、正常アルブミン尿であっても、
eGFRが低下していると、心腎イベントリスクが高くなります

国内で2型糖尿病のある方を対象に行われた後ろ向き観察研究では、正常アルブミン尿の方の中でeGFR 60mL/min/1.73m2未満とeGFR 60mL/min/1.73m2以上の方の予後を検討しました。
その結果、60mL/min/1.73m2未満の群では、eGFR 60mL/min/1.73m2以上の群と比べて「50%以上のeGFR低下または腎代替療法」のリスクが4.1倍、「アルブミン尿区分の進行」のリスクが2.1倍(いずれもp<0.001、Cox比例ハザードモデル)に上りました。

また、2型糖尿病のある方の場合、正常アルブミン尿であっても、eGFR 60mL/min/1.73m2未満では心イベントのリスクも高くなります。
2型糖尿病のある正常アルブミン尿の方を対象にeGFR別に予後を検討した前向きコホート研究では、eGFR 30mL/min/1.73m2以上60mL/min/1.73m2未満の群の心血管イベント発現リスクは、eGFR 90mL/min/1.73m2以上の群の3.05倍であったと報告されました(p=0.002、Cox比例ハザードモデル)。

このように、2型糖尿病のある方では、腎機能が低下している場合、正常アルブミン尿であっても、心腎イベントのリスクが高くなります。
今回提示している患者さんのように、現在治療中の方に対しては長期的なマネジメントが必要となります。
患者さんの10年後の予後を見据え、心保護、腎保護を考慮した場合、経過観察、追加の治療介入等、どのような治療選択をされますか。
ジャディアンスのエビデンス
EMPA-KIDNEY試験

EMPA-KIDNEY試験は、eGFR 20mL/min/1.73m2以上45mL/min/1.73m2未満、またはeGFR 45mL/min/1.73m2以上90mL/min/1.73m2未満かつUACR 200mg/gCr以上(または尿中蛋白/クレアチニン比が0.3g/gCr以上)のいずれかを満たす、腎疾患進行のリスクのある慢性腎臓病患者を対象としています。そのため、eGFR 20mL/min/1.73m2以上45mL/min/1.73m2未満かつUACR 30mg/gCr未満(正常アルブミン尿)の方が含まれています。
ここから、ジャディアンス10mgを1日1回経口投与した時の有効性および安全性について、正常アルブミン尿の方や、ARBを含むRAS阻害薬を使用している方におけるサブグループ解析を含めて紹介します。

主要評価項目である腎疾患進行または心血管死の初回発現までの期間の、プラセボ群に対するジャディアンス10mg群のハザード比は0.73(99.83%CI:0.59~0.89)、p<0.0001(Cox回帰モデル)であり、ジャディアンス10mg群の優越性が検証されました。
また、RAS阻害薬を使用している方にジャディアンス10mgを投与した場合でも、主要評価項目のリスクが29%低下しました(p<0.0001、名目上のp値、Cox回帰モデル)。

日本人集団では、ジャディアンス10mgの投与により、主要評価項目のリスクが56%低下しました(p=0.0004、名目上のp値、Cox回帰モデル)。
日本人集団のうち、RAS阻害薬を使用している方にジャディアンス10mgを投与した場合の主要評価項目のハザード比は0.44(95%CI:0.27~0.74、Cox回帰モデル)でした。

腎機能低下を評価する指標の一つにeGFRスロープがあります。
eGFRスロープは、1年あたりのeGFRの低下速度を示します。治療介入によってeGFRスロープの低下が0.5~1.0mL/min/1.73m2/年緩やかになると、腎疾患進行が抑制される可能性があります。
なお、治療介入によりeGFRの低下が抑制されたとしても、治療介入のタイミングによっては、最終的に腎代替療法の導入が必要となる可能性があることから、腎代替療法導入を回避するためにも、早期介入を行う必要があります。

EMPA-KIDNEY試験でも、ジャディアンスのeGFRスロープへの作用を検討しました。
2ヵ月目の来院から最終フォローアップ来院まで(慢性期)において、全体集団のジャディアンス10mg群では、UACRにかかわらず、eGFRスロープを有意に抑制しました(正常群:p=0.0008、微量および顕性アルブミン尿群:各p<0.0001、いずれもvs. プラセボ群、名目上のp値、shared parameterモデル)。
また、RAS阻害薬の使用の有無にかかわらず、eGFRスロープを有意に抑制しました(RAS阻害薬の使用なし群:p=0.0087、RAS阻害薬の使用あり群:p<0.0001、いずれもvs. プラセボ群、名目上のp値、shared parameterモデル)。

EMPA-KIDNEY試験において、事前に規定した非重篤有害事象および全ての重篤な有害事象に限定して有害事象を収集した結果、全体集団での発現割合はジャディアンス10mg群で43.9%でした。
主な有害事象は、ジャディアンス10mg群で痛風7.0%、コロナウイルス感染3.0%、急性腎障害2.8%等でした。
また、重篤な有害事象は、ジャディアンス10mg群でコロナウイルス感染98例、急性腎障害93例、血中カリウム増加76例等でした。
なお、投与中止、死亡に至った有害事象は表のとおりでした。

EMPA-KIDNEY試験における日本人集団での発現割合はジャディアンス10mg群で37.7%でした。
主な有害事象は、ジャディアンス10mg群で低血糖3.1%、白内障手術2.7%、脱水2.1%等でした。
また、重篤な有害事象は、ジャディアンス10mg群で白内障手術8例、末期腎疾患5例、動静脈シャント手術4例等でした。
なお、投与中止、死亡に至った有害事象は表のとおりでした。
実臨床におけるSGLT2阻害薬の腎機能低下に対する影響

J-CKD-DBおよびJ-CKD-DB-Exに登録されている糖尿病のある方を対象とした国内の後ろ向き観察研究では、SGLT2阻害薬の投与による腎機能低下に対する影響を評価しました。
本研究では、SGLT2阻害薬の投与により、その他の血糖降下薬を投与した群と比較してeGFRスロープを有意に抑制したことが示されました(p<0.001、名目上のp値、線形混合回帰モデル)。
また、RAS阻害薬を使用している方に対して、SGLT2阻害薬を追加投与した場合も、その他の血糖降下薬を投与した群よりもeGFRスロープを有意に抑制しました(p<0.001、名目上のp値、線形混合回帰モデル)。
血糖管理、心保護、腎保護にエビデンスを持つジャディアンス

ジャディアンス錠10mg・25mgは、2015年に2型糖尿病の治療薬として国内で発売されました。その後、ジャディアンス錠10mgは2021年に慢性心不全※1、2024年に慢性腎臓病※2への効能又は効果、用法及び用量が追加承認されました。
今日までの10年間は、毎年、臨床成績の発表等を行っており、血糖管理、心保護、腎保護の3領域、それぞれについてエビデンスが示されています。
※1 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。
※2 ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。

また、ジャディアンスは、慢性腎臓病※2、慢性心不全※1に対しては、1日1回10mg、2型糖尿病に対しては1日1回10mgまたは25mgの用量が設定されており、2型糖尿病に対しては治療強化が可能です。
※2 ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。
※1 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。

今回、2型糖尿病のある方のうち、正常アルブミン尿の方に対するマネジメントの考え方について、将来的なリスクとジャディアンスの有効性をご紹介しました。
ジャディアンスは、EMPA-KIDNEY試験のサブグループ解析にて、正常アルブミン尿の方や、RAS阻害薬を使用している方等に対するエビデンスがあります。
2型糖尿病のある方の将来の心腎イベントリスクを考慮して、ジャディアンス錠10mgの処方をご検討ください。