EGFR遺伝子変異に基づく個別化医療の可能性 #2(静止画)

サイトへ公開:2025年07月30日 (水)

ご監修・ご出演:田中 洋史 先生(新潟県立がんセンター新潟病院 院長)

EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌におけるUncommon mutationに対するジオトリフ単剤療法と化学療法を比較したランダム化比較試験、ACHILLES試験が報告されました1)。ACHILLES試験の結果を踏まえると、EGFRのUncommon mutationに対する適切な治療を実施するには、副作用のマネジメントが重要不可欠です。そこで今回は、新潟県立がんセンター新潟病院 院長の田中 洋史先生に、ジオトリフの副作用マネジメントについてお伺いしました。

インタビュー実施日:2025年2月27日(木)

ACHILLES試験の臨床への影響

ACHILLES試験の結果は、Uncommon mutationに対する一次治療の選択にどのように影響すると考えられますか?

ACHILLES試験の結果に基づくと、Uncommon mutationを有する患者に対しては、ジオトリフを治療選択肢として提示し、投与を検討することが必要であると考えられます。

ジオトリフを使いこなすための副作用マネジメント

ACHILLES試験の結果から、どのような副作用に注意が必要でしょうか?

ACHILLES試験のジオトリフ群において認められた主な有害事象は、下痢(82%)、爪囲炎(59%)、皮疹(56%)などでした。また、グレード3以上の有害事象の発現率は、下痢22%、爪囲炎7%、皮疹1%でした。

ジオトリフによる治療を行う上で、副作用にどのように向き合ったらよいでしょうか?

副作用は、適切な予防策と早期発見・早期対処によって、重篤化を防ぐことが重要です。

また、医師が副作用を過剰に恐れていると、患者さんに余計な不安を与えてしまいかねません。そのため、ポイントを押さえて適切にマネジメントしながら治療を継続していくことが重要です。

適正使用ガイドでは、投与対象患者の選択、投与方法、治療前から治療中の注意すべき事項や、発現する可能性のある副作用とその対策について解説されています。そのため、適正使用ガイドを参照して副作用への対策や対応を行うと良いでしょう。

先生は、副作用の中でも頻度の高い下痢や皮膚毒性にどのように対処されていますか?

これまで、EGFR阻害剤による下痢や皮膚毒性の管理については、多くの検討が行われてきました。その結果、皮膚障害に関しては、投与前から予防策を講じることの重要性が示されています。一方で、下痢については、支持療法のみでは十分に管理できない可能性が指摘されています2,3,)

これらの結果から、ジオトリフによる皮膚毒性に関しては、積極的な予防的介入が重要であり、下痢については、支持療法を実施した上で、適切な休薬や減量を行うことが重要と考えられます。

爪囲炎や皮疹の予防介入はどのように行っていますか?

予防策には次のことが含まれており、日常生活において、朝から注意すべき点を含めて患者さんに指導しています。

  • 保清(手洗いなど)
  • 保湿(定期的な保湿剤の塗布など)
  • 保護(家事の際の手袋の着用、深爪を避けるなど)

また、当院では、以前の治療で皮膚毒性が出たことがある症例や、グレード2以上の皮膚毒性が生じている症例などでは皮膚科とも連携して対応に当たっています。

また、場合によっては数日間の入院で、多職種による指導を行いながら導入することもあります。

安全かつ効果的に治療を進めるために、担当医一人でなく、他科と連携したり、多職種で副作用マネジメントを行ったりすることも手段の一つだと考えています。

※副作用発現時の対応については、適正使用ガイドも併せてご参照ください。

下痢への対策として、どのように患者さんとのコミュニケーションをとっていますか?

実際に臨床で治療されている患者さんの中には、副作用が生じていても、減量や中止をしたくないからと、軽度であれば我慢してしまう方もいらっしゃいます。

ACHILLES試験における有害事象発現に伴うジオトリフの減量状況についてご紹介します。

有害事象によりジオトリフ40mg群の16.7%で投与が中止されました。また、52.7%の症例では減量後も継続投与されていることが示されました。

この減量に関するデータから、副作用が発現した場合には、適切な減量を行うことが治療継続の上で重要であると考えられます。

そのため、患者さんにはあらかじめ下痢が起こりやすいことを伝え、さらに、重度の下痢や長引く下痢が生じた場合には、減量や場合によっては休薬しながら治療を進めることになる旨を説明しておくようにしています。

※副作用発現時の対応については、適正使用ガイドも併せてご参照ください。

1) Miura S, et al.: Journal of Clinical Oncology. Apr 16 2025: JCO2402007. Online ahead of print.
本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施された。

2) Okajima M, et al.: Transl Lung Cancer Res 10(1):252-260, 2021
著者に日本ベーリンガーインゲルハイム社より研究助成やコンサルタント料等を受領している者が含まれる。

3) Kobayashi Y, et al.: Future Oncol 11(4):617-627, 2015

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P-Mark 作成年月:2025年7月