肺癌におけるEGFR遺伝子変異① ー Uncommon mutationとCompound mutation

サイトへ公開:2020年07月20日 (月)

第2回:肺癌におけるEGFR遺伝子変異① ー Uncommon mutationとCompound mutation

EGFR遺伝子変異陽性肺癌は、変異のサブタイプによってEGFR-TKI の感受性が異なることが知られています1)。 
そこで今回は、EGFR遺伝子変異のうちUncommon mutationとCompound mutationについて、ご紹介します。

1) 日本肺癌学会, 日本肺癌学会バイオマーカー委員会編 肺癌患者におけるバイオマーカー検査の手引き(2024年4月改定)

【Uncommon/Compound mutationの発現頻度】

海外で実施された次世代シーケンシングによる遺伝子解析の報告では、EGFR遺伝子変異陽性肺腺癌患者の33%が、Uncommon mutation単独、もしくはCompound mutationのいずれかを有していました。このようなCommon mutation単独以外の変異を有する患者群のうち、75%がCompound mutationを有する例でした。(図1)

(図1)

【ジオトリフのEGFR遺伝子変異発現細胞に対する親和性】

ご覧の表は、各種EGFR遺伝子変異発現細胞に対するEGFR-TKIのin vitroでの50%阻害濃度(IC50)を示しています。
ジオトリフでは、Del 19やL858RといったCommon mutationに加え、L861QやG719Xといった既知のエクソン18~21変異に対しても高い親和性を示しました。
一方、Ins 20(エクソン20の挿入変異)やT790Mにおける IC50は64 nM~268 nMでした。(図2)

(図2)

 

【Uncommon mutationに対するジオトリフの有効性】

ジオトリフでは、EGFR遺伝子変異のうちUncommon mutationにおける有効性を検討するため、ジオトリフの臨床試験であるLUX-Lung 2、3、6試験の統合解析が行われました。(図3)

(図3)

本統合解析では、 LUX-Lung 2、3、6試験でランダム化または治療を受けた838例のうちジオトリフが投与され、かつUncommon mutationを有する75例を3グループに層別化し、同じくUncommon mutationを有する化学療法群25例とともに解析を行いました。
グループ1はエクソン18~21の点突然変異あるいはCompound mutationを有する38例、グループ2はT790M変異単独あるいは他の変異とのCompound mutationを有する14例、グループ3はエクソン20の挿入変異(Ins 20)を有する23例とされました。

 

3グループのEGFR遺伝子変異タイプの内訳はご覧の通りです。グループ1には L861Q単独12例、G719X単独8例などが含まれました。(図4)

(図4)

本統合解析の結果、Uncommon mutationのうちG719X、L861Q、S768Iの変異に対するジオトリフの奏効率は、それぞれ77.8%、56.3%、100%でした。(図5)

【本試験の安全性情報はこちら】

(図5)

【Compound mutation に対するジオトリフの有効性】

LUX-Lung 2、3、6統合解析におけるPFSのカプランマイヤー曲線をお示しします。PFS中央値は、L861QやG719Xを含むグループ1で10.7ヵ月、化学療法群で8.2ヵ月でした。
一方で、 T790Mを含むグループ2およびエクソン20の挿入変異を有するグループ3のPFS中央値はそれぞれ2.9ヵ月、2.7ヵ月でした。(図6)

【本試験の安全性情報はこちら】

(図6)

LUX-Lung2,3,6統合解析では、安全性情報を収集しておりません。安全性情報に関しては、製品電子添文をご参照ください。

LUX-Lung 2試験では、ジオトリフ40mg群の副作用発現率は100.0%でした。発現率50%以上の副作用としては、下痢(96.7%)、発疹/ざ瘡(90.0%)、爪の異常(80.0%)、口内炎(50.0%)が認められました。

LUX-Lung 3試験では、ジオトリフ群の副作用発現率は99.6%でした。発現率50%以上の副作用としては、下痢(95.2%)、発疹/ざ瘡(89.1%)、口内炎(72.1%)、爪の異常(61.1%)が認められました。また、Grade 3以上で発現率10%以上の副作用としては、発疹/ざ瘡(16.2%)、下痢(14.4%)、爪の異常(11.8%)が認められました。
LUX-Lung 3試験におけるPEM+CDDP(ペメトレキセド+シスプラチン)群の副作用発現率は95.5%でした。発現率50%以上の副作用としては、悪心(65.8%)、食欲減退(53.2%)が認められました。また、Grade 3以上で発現率10%以上の副作用としては、好中球減少症(18.0%)、疲労(12.6%)が認められました。

LUX-Lung 6試験では、ジオトリフ群の副作用発現率は98.7%でした。発現率50%以上の副作用としては、下痢(88.3%)、発疹/ざ瘡(80.8%)、口内炎/粘膜炎(51.9%)が認められました。
LUX-Lung 6試験におけるGEM+CDDP(ゲムシタビン+シスプラチン)群の副作用発現率は99.1%でした。発現率50%以上の副作用として嘔吐(80.5%)、悪心(75.2%)が認められました。(図7)

(図7)

今回ご紹介した内容が、先生の肺癌診療のお役にたてましたら幸いです。

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