『石井晴之, 栗原泰之編. 教科書では学べない胸部画像診断の知恵袋. p72-92. 2020』 10IPFの急性増悪とは、おおむね1カ月以内の経過で①悪化する息切れ、②HRCTにて蜂巣肺所見に加えて新規のすりガラス影+浸潤影、③同一条件下でPa02の10torr以上の低下、④明らかな肺感染症、気胸、悪性腫瘍、肺塞栓や心不全を除外する、とする『特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き 改訂第4版』3)により臨床的に診断します。これまで比較的正常に機能していた肺胞領域にいわゆるびまん性肺胞障害(DAD)という組織変化が加わり、急速に呼吸面積が減少するために致死的な呼吸不全が進行し、予後不良となります。まずは、胸部X線(正面像)を確認します。今回の症状発症の6カ月前では、両側肺野(中~下肺野優位)にびまん性に外側域に網状影がみられています。そして、右 minor fissureの位置が正常より横隔膜寄りに偏移し(図1:矢印❶)、下肺優位の肺容積減少を示唆します。また、横隔膜陰影が不明瞭で(図1:矢印❷)、下肺末梢胸膜直下優位に線維化病変が分布することを反映します。■図1 胸部X 線(正面像:6 カ月前)次に、今回の受診時の胸部X 線(正面像)では両側上~下肺野にすりガラス影が広汎に出現 しています(図2: 丸円)。そして、横隔膜が上昇しています。症例 1:76歳、男性、IPFで通院中。2週間前から増悪する体動時呼吸困難と微熱で来院。
元のページ ../index.html#10