最新版 IDF Diabetes Atlasに見る世界の糖尿病の現状

サイトへ公開:2022年06月28日 (火)

矢部先生お写真

2021年12月に発表されたIDF Diabetes Atlas 第10版において、日本は世界第9位の糖尿病大国であることが示されています。このような状況において、アジア人・日本人の病態に即した糖尿病治療の重要性を岐阜大学大学院医学系研究科糖尿病・内分泌代謝内科学/膠原病・免疫内科学 教授(インタビュー実施当時)の矢部 大介 先生にご解説いただきます。ぜひご覧ください。

はじめに-世界の糖尿病人口の現状-

2021年12月に国際糖尿病連合(International Diabetes Federation;IDF)から、世界の糖尿病に関する最新の調査をまとめたIDF Diabetes Atlas第10版が発表されました。
IDF Diabetes Atlas第10版によると、2021年の世界の糖尿病人口は5億3,700万人、実に成人の10人に1人が糖尿病をもつことが示されています。また、この数字は2030年までに6億4,300万人、2045年までに7億8,300万人にまで増加することが見込まれており、糖尿病は健康や福祉、医療経済における世界的な課題となっています1)

1. 日本の糖尿病人口は世界第9位

 

IDF Diabetes Atlasでは世界を7地域に分けて統計値を算出しており、日本が含まれる「西太平洋地域」は、世界で最も糖尿病人口が多い地域であることが報告されています(図1)。また、日本の2021年における糖尿病人口は1,100万人と推定されており、世界第9位の糖尿病大国となっています1)
厚生労働省から発表されている平成28年「国民健康・栄養調査」では、糖尿病が強く疑われる者、糖尿病の可能性を否定できない者(予備軍)はいずれも約1,000万人と推計され、糖尿病の有病率は直近の20年間で増加傾向にあります(図22)

2. 人種差を考慮した薬剤選択の重要性とトラゼンタ®のエビデンス

 

2型糖尿病の薬物療法では、個々の糖尿病の病態や合併症の状態を考慮して薬剤選択を行い、健康的な食事や運動を実践しながら、安全かつ継続的に血糖管理目標を達成することが重要です。2型糖尿病の病態には人種差の存在が広く知られており、薬剤選択の根拠となる臨床研究から得られるエビデンスについて人種差を考慮して理解する必要があります。
2型糖尿病を有する日本人においてトラゼンタ®併用療法の安全性や有効性を検討した3年間の特定使用成績調査(図3)では、副作用は11.39%(384例/3,372例)に認められ、主な副作用は糖尿病の悪化(1.25%、42例)、高血圧(0.83%、28例)、低血糖(0.80%、27例)などでした。重篤な副作用は2.49%(84例)、投与中止に至った副作用は3.23%(109例)、死亡に至った症例は3.9%(13例)でした(図4)。また、トラゼンタ®併用療法により、HbA1cと空腹時血糖は図4のとおり推移し、HbA1cの変化量は-0.49±1.33%(95%CI:-0.54~0.44%;ベースライン7.76±1.37%、最終観察時点7.26±1.19%)、空腹時血糖の変化量は-15.27±59.96mg/dL(同:-19.54~-11.00mg/dL;151.68±52.20mg/dL、136.72±44.27mg/dL)でした(いずれも平均±SD)3)
なお、トラゼンタ®では心血管疾患の既往もしくは心血管イベントリスクのある2型糖尿病と診断されて比較的間もない人を対象としたCAROLINA試験、心血管や腎イベント、またはその両方のリスクが高い2型糖尿病を有する人を対象としたCARMELINA試験において、それぞれアジア人サブグループ解析が実施されています。(図54)5)

おわりに

 

わが国の糖尿病診療では、日本人の2型糖尿病の病態を考慮してDPP-4阻害薬が選択されることが多いため、今回ご紹介したトラゼンタ®に関する日本人、アジア人における臨床研究の成績が、糖尿病臨床における薬剤選択の一助になることを願っています。

References

  1. IDF Diabetes Atlas 10th edition. https://diabetesatlas.org/idfawp/resource-files/2021/07/IDF_Atlas_10th_Edition_2021.pdf.
  2. 厚生労働省. 平成28年「国民健康・栄養調査」の結果. https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177189.html.
  3. Ito T. et al. Expert Opin Drug Saf. 2021; 20: 363-72. (本調査はベーリンガーインゲルハイム社および日本イーライリリー株式会社の支援で行われました。本論文の著者のうち5名は、日本ベーリンガーインゲルハイム社の社員です。)
  4. Kadowaki T. et al. Diabetology International. 2020; 12: 87-100. (本調査はベーリンガーインゲルハイム社および日本イーライリリー株式会社の支援で行われました。)
  5. Inagaki N. et al. Diabetol Int. 2020; 11: 129-41. (本調査はベーリンガーインゲルハイム社および日本イーライリリー株式会社の支援で行われました。)
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