吸入“指導”を通じて療養を“支援”し患者さんの暮らしを支えていく

サイトへ公開:2024年06月27日 (木)

潜在的なCOPD患者さんを適切な診療につなげるには、日常的な診療を担うプライマリケア医と専門医の連携が重要です。また、効果的な吸入指導では、看護師や薬剤師の協力が不可欠です。今回は、広島県安芸地区で地域住民の健康管理を担うマツダ病院と安芸薬剤師会の取り組みについて、お話をうかがいました。  
開催年月日:2024年2月20日(火)  
開催地:一般社団法人安芸薬剤師会(広島県安芸郡府中町)

Interview 01

大成 洋二郎 先生    
マツダ病院 呼吸器内科    
主任部長 医師

潜在的なCOPD患者さんを拾い上げ適切な治療に繋げていく

― マツダ病院の地域における役割、診療体制や特徴をご紹介いただけますでしょうか。

当院には大きな役割が2つあります。1つはマツダの社員の健康管理、もう1つは地域住民の健康管理や診療です。マツダを支える社員とその家族のための病院であるとともに、地域貢献の一環として開設された病院でもあるのです。当院は約270床の中規模施設であり、がんや循環器疾患といった重症患者に対する診療から、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病や感染症まで幅広く診る、地域に根差した病院です。呼吸器内科でも肺がん、間質性肺炎、肺炎から気管支喘息、COPD診療まで広く対応しています。
地域住民の健康管理を担うには、診療所やクリニックのプライマリケア医の先生方との連携が大切です。日常的な診療の中で患者さんの重症化の芽を見つけ、我々に紹介していただき、症状が落ち着いたところで地域に戻す、という機能分化を推進するためにも、プライマリケア医の先生方と日頃から顔の見える関係性を構築していくことが重要になります。そのため、オープンカンファレンスや研修会などを定期的に開催しています。新型コロナウイルス感染症の感染拡大時には中断し、オンラインで実施していましたが、最近になって対面での実施も少しずつ再開しました。プライマリケア医の先生方とともに、地域に貢献していきたいと考えています。

― 呼吸器内科ではふだん、どのような患者さんを診られていますか。

肺がんや間質性肺炎の患者さんが多いですが、気管支喘息も多いです。また、気管支喘息として紹介を受け、呼吸機能検査などを実施したところ、COPDであったり、ACO( 喘息とCOPDのオーバーラップ)であったりすることもあります。COPDを疑って紹介される患者さんというのはかなりまれです。しかし、COPDの患者さんがいないということではないので、潜在的なCOPD患者さんを拾い上げていくことが重要です。潜在的なCOPD患者さんは500万人以上もいるといわれていますし、地域にも実はCOPDである患者さんが少なくないと考えています。COPDは“たばこ病”ともいわれており、高齢男性の多くは過去に喫煙歴があるため、70歳以上の4人に1人はCOPDの疑いがあると見込まれているほどです。COPDを疑うには咳や痰、息切れに注目することが重要ですが、多くの患者さんはこれらの症状は年のせいだと思い、病院を受診する必要がないと考えています。そのため、生活習慣病で定期的にプライマリケア医に診てもらっていても、咳や痰、息切れの症状をわざわざ訴えるほどのことではないと思って放置しまうことも多いです。
一方、医師側も、COPDを疑わず、見過ごしてしまうことが非専門医の先生では少なくありません。COPDという病気の認知度が医師の中でも低いことが大きな課題です。COPDの併存症として圧倒的に多いのが高血圧症であり、多くのプライマリケア医が潜在的なCOPDを有する高血圧症患者を診ているはずです。しかし、高血圧の背後にCOPDが潜んでいるかもしれない、とはなかなか疑えないのかもしれません。
我々のもとに紹介されてくるのは、自分自身で咳や息切れが異常であると感じるような、重症のCOPD患者さんばかりです。本来はそこまで症状が進行する前に受診すべきであり、早い段階で診断・治療ができていれば、患者さんの予後や健康寿命をもっと延ばせるでしょう。COPDという病気に関する啓発が患者さんにも医師にも十分でないと思っています。これは当地域に限ったことではなく、全国的な課題です。まずは疑うことが重要です。そして、COPDを疑い判断に迷う場合は専門医に紹介していただきたいと思っています。

― COPDを診療する上で、どのようなことを重視されていますか。

もし喫煙しているようであれば、禁煙してもらうことが絶対条件です。また、“COPD”というアルファベットの病名では理解してもらいにくいため“肺気腫” “慢性気管支炎”といった言葉で伝えることもあります。「肺が悪いのだろう」と何となくでも意識してもらうことが大切です。
その上で吸入療法を始めていくのですが、高齢患者さんの多くは「薬は飲むもの」という固定観念が強く、「薬を吸う」ということに強い抵抗感をおぼえる患者さんも少なくありません。COPDの治療において吸入療法が基本であると伝えても「飲み薬はないのですか?」と質問されることもよくあります。
また、たとえば吸入療法を始めても患者さんの症状に改善が見られなかった場合「吸入薬がその患者さんに合わなかったのか」と「正しく吸入できていないから効果が現れないのか」という2つの理由を考えなければならないのが、吸入療法の難しさです。内服薬であれば飲むことは難しくありませんので、症状が改善しないようであれば処方薬が合わなかったのだろうと推測できますが、吸入薬は一概にそうともいえません。
COPDという病気の認知度の向上、吸入薬に対するイメージの改善、正しい吸入方法の理解を常に意識しています。そして、これらを解決するには、適切な吸入指導が重要であると考えています。

― マツダ病院における吸入指導について教えてください。

当院では、看護師に初回から吸入指導をお願いしています。私はこれまで吸入指導の重要性を認識し、取り組んできましたが、なかなかうまくいきませんでした。その理由を考えてみたところ、医師が診察時間の中で手短に吸入指導をすると、患者さんはそれで十分と思ってしまい、看護師や薬剤師など他職種からの説明を聞かなくなってしまっていることに気づきました。吸入療法では、吸入前の準備やデバイスの操作、実際の吸入など、複数の手順があり、それらは限られた診察時間で完ぺきに伝えることが難しく、医師が指導した上で、さらに他職種に繰り返し指導してもらうことが重要なのですが、患者さんにはその重要性が伝わっていなかったのです。そこで、私自身は吸入指導をせず、看護師にすべて任せることにしました。
当初は看護師もかなり戸惑ったようです。「吸入薬はふつうに吸えばよいのに、わざわざ指導する必要があるのだろうか」「説明書を見てその通りに吸入すれば十分なのではないか」など、吸入指導の重要性を認識していない看護師もいました。しかし、偶然にも喘息の子どもを持つ看護師がおり、その子どもが吸入しているデバイスの吸入手技を確認してもらったところ「もしかしたら自分の子どもは正しく吸入できていないのではないか…」と気づき、吸入指導に取り組んでくれるようになりました。それ以降は、看護師同士で吸入指導の重要性を自ずと引き継いでいってくれています。
医療従事者であっても、吸入指導の意義を理解するのは容易ではないため、患者さんが理解できないのも当然です。以前、かかりつけ医から喘息として吸入薬を処方され、吸入を続けたものの、症状が改善せず、喘息以外の疾患が疑われた患者さんの紹介を受けたことがあります。吸入指導を行ったところ、吸入手技の不良でまったく吸入ができていなかったことが判明しました。吸入指導で十分に吸入できるようになると吸入薬を変更しなくても症状が改善したことがありました。吸入指導の重要性を実感した瞬間です。
また、患者さんは医師には話さず看護師にだけ話しているということも多くあります。外来で診察時間が限られる中、医師は症状や治療について話すだけで終わってしまうことが少なくありません。しかし、看護師は日常の様子であったり、実は困っていることであったり、様々なことを聞き出してくれます。「あの患者さん、そんなことを話していたのか」と思うこともよくあります。過去に吸入薬を処方されたことがあったにもかかわらず、診察時にはそのことを話してくれず、吸入指導のときに看護師に話し、看護師がそれを私に伝えると同時に患者の吸入手技から最適と考えられるデバイスの処方提案をしてくれたこともあります。医師では聞き出せなかった、患者さんが日常的に困っていることなどを看護師が引き出し、それを医師に伝え、初診時に適切な診断や吸入薬の処方ができ、症状の改善につなげる、という一歩先の吸入指導が看護師のおかげでできていると思っています。

― 吸入指導において、薬局・薬剤師にどのようなことを期待されていますか。

患者さんにしっかりと向き合った丁寧な吸入指導を期待しています。外来の医師や看護師は時間との勝負であり、多くの患者さんを効率的に診ていかなければなりません。もちろん、すべての患者さんが理解できるまで吸入指導をしたいと考えていますが、限界があります。お忙しいとは思いますが、保険薬局の薬剤師の先生方が丁寧な吸入指導を主導的に行っていただければと思います。ただ、薬局や薬剤師によって差異があることも事実です。吸入指導はただでさえ手間も時間もかかるところ、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって対面指導も難しくなり、一部の熱心な薬局や薬剤師を除けば、吸入指導は浸透していないと感じています。これは当地域に限ったことではなく、全国的な課題です。そのため、当院の薬剤部が地域の保険薬局と連携し、広島県内で統一して使用できる「吸入チェックシート」の活用を促しています。2020年度診療報酬改定で吸入薬指導加算が新設されたこともあり、一時期はトレーシングレポートと合わせて多く送られてきていましたが、最近は数が減っているようです。多くの薬局・薬剤師に吸入指導に対するモチベーションを維持してもらうことが重要であると感じています。

― 今後の展望・目標についてお聞かせください。

潜在的なCOPD患者さんを拾い上げ、診断をつけ、適切な治療に繋げていくことです。そのためにも、地域のプライマリケア医や保険薬局などと密に連携していきたいと考えています。吸入指導は初回が何よりも重要です。患者さんにとって最適な吸入薬であったにもかかわらず、初回の吸入指導が不十分であったことで効果を実感できず、その後アドヒアランス不良となってしまうこともよくあります。吸入指導は初回の第一歩が重要であり、「まず処方して様子を見て、上手くいっていないようであればその都度、対応していこう」という姿勢では患者さんのためになりません。
処方した吸入薬が効き、再診で訪れた患者さんに「とても楽になりました」といってもらえると、我々もとても嬉しく思います。地域に根差した病院として、地域の健康管理に寄与していきたいと思っています。

Interview 02

金谷 千晴 先生     
マツダ病院 看護部 
内科外来 看護師

吸入指導を通じて医師と患者さんの双方から学ぶ

― 院内での吸入指導における看護師の役割についてお聞かせください。

症状や治療に関することではなく、まず日常の様子や困っていることを聞き、医師に伝えた上で、医師と一緒に患者さんにとって望ましい治療を考えていくことです。当院を受診される患者さんの中には、他院で吸入薬を処方されたものの症状の改善が十分ではなく、紹介受診される方も多くいらっしゃいます。当院は、看護師が中心となって吸入指導を行っています。私は、マツダ病院に入職して、初めて吸入指導について教わりました。それまでは「吸入薬なのだから吸えばよいのだろう」と思っていましたが、吸入指導に携わるようになって、正しく吸入することがいかに大切か、患者さんに正しく吸入してもらうための指導がどれだけ大切かを初めて実感しました。
まずは患者さんに日常の様子や症状などをうかがい、練習用の吸入デバイスを用いてふだんの手技を確認させてもらいます。
手技確認と合わせて、診察時に医師に伝えられていなかったことなどがあれば、看護師としての考えと合わせて情報を共有し、症状が改善しない要因がどこにあるのか、医師とともに考えるようにしています。

― 看護師として、吸入指導でどのようなことを重視しているのでしょうか。

患者さんが感じている日常生活の困難さや吸入の難しさを聞き出す問診を重視しています。吸入薬を服用されている患者さんには高齢の方が多く、私たちが思っている以上に、意外なところで困難さを感じていることが少なくありません。たとえば、患者さんに「吸入薬というのは吸うのですか?吐くのですか?」と聞かれたことがあります。“吸入”ですから、私たちは吸うことが当たり前だと思い、その説明は省いて手技などの説明に進んでしまいがちですが、当たり前のものではなかったのだ、と痛感しました。患者さんがどこを理解できていて、どこが理解できていないのかは吸入指導をすることで初めて把握できます。それらを把握した上で指導をすることで、個別性のある指導をすることが可能です。私たちにとっての“当たり前”を前提とした指導にならないように、常に意識しています。

― COPD治療や吸入指導において、患者さんからどのような質問や要望を受けられていますか。

保険薬局で説明を聞くだけというのと、練習用の吸入デバイスを用いて実践してみるのでは、とらえられる感覚がまったく違うという意見をよく聞きます。イメージはできていても、実際にやってみると「あれ?」と感じる患者さんは意外と多いのです。吸入に対して難しさを感じるポイントは患者さんそれぞれで異なります。患者さんがご自身に合った吸入デバイスを選択できる環境も必要ではないかと感じます。生活の中に、負担を感じることなく取り入れてもらうことが、継続的治療につながると感じているため、当院での吸入指導はその環境を提供できていると感じています。また、保険薬局で説明を受けた後も、振り返りとして当院であらためて確認することで、より正しい吸入手技習得につながると思っています。

― 患者さんに接する際に工夫していることやコツはありますか。

まず、患者さんへの問診を意識しています。吸入“指導”として行ってはいますが、私たちは患者さんの療養を“支援”する立場であり、患者さんの暮らしを支えるために行っています。吸入によって症状のコントロールができれば、患者さんの生活はより充実したものとなります。看護師の役割は、患者さんの暮らしを支えることにあり、より充実した生活を送ってもらうためにも、効果的な吸入が重要であることを患者さんに理解してもらうことが大切です。
吸入薬は、患者さん自身もきちんと吸入できているのかわからないという声をよく耳にします。不安を感じながら吸入を続けることで、「なんとなく吸っている」と、吸入治療の重要性を理解できていない方が多いのも現状であると感じます。そうならないためにも、患者さんに正しい吸入を覚えてもらい、自信をもって実践できるようになってもらいたいという想いで行っています。

― 看護師として、どのようなところにやり甲斐を感じていますか。

外来を受診される患者さんの中には、看護師とあまり関わることなく、医師の診察のみで終える人も少なくありません。そのような中で、吸入指導は私たちにとって患者さんを知ることができるきっかけであると同時に、患者さんにも私たち外来看護師の存在と役割を知ってもらえる良い機会になっていると感じます。医師へは直接言いにくいこと、またちょっとした疑問も看護師になら相談できるなど、指導を通じて患者さんの気持ちに寄り添うことができ、在宅療養を支援できていると感じます。また症状がなかなか改善しなかった患者さんが、吸入指導によって症状が改善した事例も多くあります。吸入は、手技がとても大切であると実感するとともに、指導は治療効果に大きく影響するのだと感じています。そのため、私たち看護師は患者さんの理解度に合わせた丁寧な指導を意識しており、指導後の患者さんの症状確認も大切にしています。患者さんの現状を聞き出し、その問診内容を医師と共有しながら患者さんにとってより良い治療の検討ができるところも、吸入指導の良いところではないかと感じます。

― 今後の展望・目標についてお聞かせください。

医師と外来看護師の院内での連携はとても上手くいっていると感じていますが、保険薬局や薬剤師の先生方との連携は十分とはいえず、今後の課題であると思っています。たとえば、保険薬局で吸入デバイスの使用方法を説明した際に、薬剤師の先生から見て「この患者さんにこの吸入デバイスは少し難しいのではないか」と感じるようなことがあれば当院にすぐご連絡いただいたり、もしくは継続したフォローが必要そうな患者さんがいらっしゃった際には保険薬局と当院が密に連携したり、協力しながら患者さんに向き合っていければよいのではないかと思います。
看護師自身も吸入指導を通じて、疑問に思ったところは医師に質問しながら学び、また患者さんから学ぶことも多くあります。
勉強するきっかけを医師と患者さんの双方からもらい、看護師としての経験値が日々上がっていると実感しています。患者さんの症状が良くなるにはどうすればよいのかを常に意識しながら、今後も患者さんと向き合っていきたいと思っています。

Interview 03

平賀 忠久 先生  
一般社団法人安芸薬剤師会 
会営薬局 安芸畑賀薬局 薬剤師

かかりつけ薬局・薬剤師とは薬剤師の当たり前の責務の具現化

― 安芸薬剤師会として、地域医療の面でどのようなことを課題としてお感じでしょうか。

広島市の事業である「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施」に携わる中で、高齢者に対して薬剤師としてのケアを提供しているものの、その成果が形として見えていないことを課題として感じています。高齢者への医療と介護について、薬剤師としての立場からの働きかけがどのように貢献できているか、目に見える形にしていく必要があると思っています。
安芸地区でも高齢化率が進展しています。今後の日本が迎える少子高齢化社会において、労働生産性を維持するためにも、働く意思を持った高齢者に就労してもらうことが重要です。また、就労してもらうためには、高齢者に健康な状態を継続してもらうことが大切であり、健康寿命を延ばし、日常に制限を受ける期間を短くすることが求められていると考えています。安芸薬剤師会としても、地域の高齢者医療・介護にどのような取り組みができるか、常に試行錯誤しています。

― かかりつけ薬局・薬剤師への考え方についてお聞かせください。

かかりつけ薬局・薬剤師とは、患者さんに安全・安心の医療と、より効率的・効果的な医療の提供を行うべき、薬剤師の責務の具現化であると思っています。我々はこれまで、このことを常に念頭に置いてきました。昨今の診療報酬改定において、かかりつけ薬局・薬剤師の取り組みが新たに評価されるようになっていますが、それ以前から地域住民や患者さんにとって良いことは何だろうか、と考えながら日々の業務に向き合ってきた我々にとっては違和感があるのが正直な気持ちです。
私が保険薬局の薬剤師としての第一歩を踏み出した約30年前は医薬分業率も20%台前半で、院外処方箋を受け取って外部の薬局で薬を受け取るという仕組みが浸透しておらず、「なぜ病院でなく薬局で薬を受け取らなければならないのか」と質問や苦情を受けたものです。その際、患者さんには院外処方のメリットとして、薬の情報をよりわかりやすくお伝えできる、飲み合わせをチェックできる、患者さんのニーズにより合致した調剤方法を提供できる、といったことをお伝えしていました。
もちろん、これまでの当たり前の取り組みが評価されることは良いことです。調剤報酬として算定できる部分は算定しつつ、これまで通り薬剤師としての責務を果たしていくことが重要であると考えます。

― 吸入指導をはじめ、安芸薬剤師会ではどのような取り組みを推進されていますか。

吸入デバイスの特徴を理解し、患者さんに正しく吸入指導し、実践してもらうために、安芸薬剤師会として薬薬連携研修会などを実施してきました。2014~2023年の10年間で呼吸器疾患系の勉強会・講習会を複数回実施し、特に2015年と2018年には吸入薬を供給している製薬企業に一堂に会してもらい、吸入実技指導を開催しました。薬局や薬剤師によって吸入指導の良し悪しにどうしても差が出てしまいがちですが、このような実技研修会を行うことで、それぞれの吸入デバイスの特徴を把握し、患者さんに正しく使用してもらうための吸入手技を理解するとともに、薬剤師全員が同じレベルで吸入指導を行えるよう取り組んできました。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、このような大々的な研修会は中断していますが、吸入指導の実技講習会を薬剤師会として再開していきたいと考えています。

― 薬局における吸入指導で、患者さんからどのような質問や要望を受けますか。

吸入デバイスの操作に困っている患者さんからの相談を受けることがよくあります。吸入薬のカートリッジを1回の診察で複数本、処方される医師もいらっしゃいます。吸入薬はある程度の期間であれば保管できるため、私は日ごろ「使用する前には1度噴霧して確認した上で吸入してください」と説明し、吸入デバイスに吸入薬をセットして渡すようにしています。しかし、処方されたそのままの状態で患者さんにお渡しする薬剤師もおり、吸入デバイスへの吸入薬のセットの仕方がわからず、困った挙げ句に当薬局に来たという患者さんがいました。
その薬剤師は、処方箋に従って患者さんに薬を渡したわけで、決して間違った対応をしたわけではありません。ただ、吸入デバイスへの吸入薬のセットができるだろうか、患者さんのことを考えるとセットまでしてあげようと思うのではないだろうか、と感じたものです。このようなほんのひと手間が患者さんの治療の継続につながります。患者さんのアドヒアランスを向上させていくことも薬剤師の大切な役割であると考えます。

― 安芸薬剤師会として今後、どのような取り組みをお考えでしょうか。

安芸地区薬薬連携研修会や広島市による高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施に関わる中で、糖尿病やCKD重症化予防、慢性心臓疾患、脳血管障害などの病態・治療・予防の勉強会を重点的に実施してきました。今後は、COPDや喘息といった呼吸器疾患の重症化について多職種連携を深めていくとともに、それらの取り組みが健康寿命の延伸や患者さんのQOLの向上に寄与するといった成果として、具体的な評価を得られるようにしていきたいと考えています。
また、新しい作用機序の薬剤が毎年のように生まれている中、医薬品の知識習得を怠らないようにしなければなりません。そういった学びの部分を患者さんの治療に活かしていくことが重要であると思っています。


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P-Mark 作成年月:2024年6月