GPPを適切に診断するために~JDA/IPCによるGPPの定義と診断基準~

サイトへ公開:2025年06月27日 (金)

ご監修:
谷崎 英昭 先生
関西医科大学附属病院 皮膚科 診療部長・診療科長・教授

1.はじめに

膿疱性乾癬(generalized pustular psoriasis; GPP)は、急激な発熱、倦怠感、浮腫といった全身症状とともに全身の皮膚が潮紅し、無菌性膿疱が多発する疾患で、再発を繰り返すことが特徴です。GPPの急性症状に対して適切な初期治療がなされなかった場合、敗血症、腎不全、呼吸不全などを併発し、生命を脅かす可能性もあります1)
日本では日本皮膚科学会(Japanese Dermatological Association; JDA)の「膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版」が公開されており、その診断基準がGPPの確定診断に用いられています。また近年では、The International Psoriasis Council(IPC)において、国際的なGPPの定義と診断基準を検討した研究も実施されています。
本稿では、JDAの「膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版」におけるGPPの定義および診断基準を解説するとともに、IPCから報告された国際的なGPPの定義と診断基準について紹介します。

2.日本におけるGPPの定義と診断基準1)

「膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版」におけるGPPの定義は、「膿疱性乾癬(汎発型)は、急激な発熱とともに全身の皮膚が潮紅し、無菌性膿疱が多発する稀な疾患である。病理組織学的にKogoj海綿状膿疱を特徴とする角層下膿疱を形成する。尋常性乾癬皮疹が先行する例と先行しない例があるが、再発を繰り返すことが本症の特徴である。経過中に全身性炎症反応に伴う臨床検査異常を示し、しばしば粘膜症状、関節炎を合併するほか、まれに眼症状、二次性アミロイドーシスを合併することがある。」と記載されています(表1)。
診断に必要な主要項目は、「1) 発熱あるいは全身倦怠感等の全身症状を伴う。2) 全身または広範囲の潮紅皮膚面に無菌性膿疱が多発し、ときに融合し膿海を形成する。3) 病理組織学的にKogoj海綿状膿疱を特徴とする好中球性角層下膿疱を証明する。4) 以上の臨床的、組織学的所見を繰り返し生じること。ただし、初発の場合には臨床経過から下記の疾患を除外できること。」の4項目が挙げられ、「以上の4項目を満たす場合を膿疱性乾癬(汎発型)(確実例)と診断する。主要項目2)と3)を満たす場合を疑い例と診断する。」とされています(表1)。
診断の参考項目は、表2に示す項目が挙げられており、病態、重症度や合併症を判定するために重要な検査項目とされています。特に、白血球数や血清CRP値、血清アルブミン値は「膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版」の重症度判定の項目にも含まれています。
除外項目には3項目が挙げられ、除外診断の解説には、「尋常性乾癬が一過性に膿疱化する場合は、原則的に本症には含まれないが、治療によって膿疱化の再発が抑えられていると判断される場合はこの限りではない。膿疱性乾癬(汎発型)と類似の臨床および病理組織学所見を示す角層下膿疱症や急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP)を含む膿疱型薬疹などは除外しなくてはならない。」と記載されています(表3)。

3.GPPの定義と診断基準の国際的なコンセンサス2)

GPPは希少疾患であることから、国際的に共有されたGPPの定義と診断基準が存在せず、早期診断・早期治療や地域をまたいだ臨床研究・疫学研究が困難でした。近年、IPCで発足したPustular Psoriasis Working Groupから、修正Delphi法によりGPPの定義と診断基準を検討した研究が報告されました。IPCは世界中の乾癬患者の健康と幸福を改善するという共通の目標を掲げる研究者と専門医のコミュニティです3)
本研究では、64例のGPP症例の専門医レビューに基づき、GPPの定義と診断基準に関する43のステートメントが作成されました。ステートメントは、GPP専門医33名からなるExperts Panelによる2回のバーチャルコンセンサス会議により評価され、合意率80%以上がコンセンサスの閾値とされました。専門医によるDelphi Roundを経て、最終的なGPPの定義(表4)および診断基準(表5)が確立されました。
本研究でコンセンサスが得られたGPPの定義は、「GPPは皮膚の紅斑と肉眼で確認可能な無菌性膿疱の形成を特徴とする、全身性炎症性疾患である」であり、亜分類として4項目が挙げられています(表4)。GPPの診断基準は必須項目と補助項目で構成され、必須項目は「肉眼で確認可能な無菌性の膿疱が紅斑上に形成され、肢端部または乾癬局面内に限定されずにみられる」とされています(表5)。補助項目には、表5に示す12項目が挙げられており、これらの項目は90%以上の合意率を得ていました。このことから、臨床症状が多岐にわたるGPPでは、臨床所見と臨床検査値の両方を考慮して診断を行うことが重要だと考えられます。

4.おわりに

本稿では、JDAおよびIPCにおけるGPPの定義と診断基準についてご紹介しました。IPCの診断基準に関するコンセンサスでは、GPPの診断に全身症状の有無や組織学的所見の確認は必須ではないとされていますが2)、JDAの「膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版」の診断基準では、確定診断には全身症状および、生検で確認された広範囲の潮紅皮膚上の膿疱の再発を確認することが必要とされています。
GPPの臨床症状や急性症状の重症度は多岐にわたりますが、再発を繰り返すことが特徴です。また、GPPの急性症状は生命にかかわる場合もあるため、GPPが疑われる場合は、GPPの診療実績が豊富な施設に紹介することも大切な選択肢の1つとなります。今回、ご紹介した診断基準がGPPの早期診断・早期治療の一助となりましたら幸いです。

References

  1. 日本皮膚科学会膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン作成委員会. 膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版. 日皮会誌. 2015; 125(12): 2211-2257.
  2.  Choon SE, et al. JAMA Dermatol. 2024; 160(7): 758-768.
    (著者にベーリンガーインゲルハイム社より講演料、コンサルタント料等を受領している者が含まれます。)
  3. The International Psoriasis Council. About the International Psoriasis Council. https://psoriasiscouncil.org/about/

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P-Mark 作成年月:2025年6月