進行性肺線維症(PPF)診療のアンメットニーズを考える(静止画)

サイトへ公開:2026年08月18日 (火)

ご監修:宮本 篤 先生(虎の門病院 呼吸器センター内科 医長、間質性肺疾患包括治療センター センター長)

間質性肺疾患(ILD)のなかには、原因疾患を問わず進行性の線維化を呈するものが含まれており、その予後は一部の悪性腫瘍に匹敵するほど不良であることが知られています1-4)。抗線維化剤オフェブの登場から10年以上が経過した現在も、生命予後の改善は依然として課題となっています。本コンテンツでは、ILD治療におけるジャスケイド®錠の登場の意義と進行性肺線維症(PPF)における有効性・安全性についてご紹介します。

 

ILDの一部は未だ予後不良

ILDは令和6年人口動態統計において、全疾患のなかで日本人男性の死因の第10位にランクインしており、予後の改善のためにさまざまな治療介入が必要な疾患であるといえます5)(図1)。

図1

このILDには、膠原病に伴うILD(CTD-ILD)や過敏性肺炎など多くの種類が存在しますが、その種類にかかわらず、特発性肺線維症(IPF)と同様に進行性の肺の線維化を生じるILDがあります。このIPF以外の、進行性の肺の線維化を生じるILDは進行性肺線維症(PPF)と呼ばれます。

このPPFの予後は、IPFと同様に不良です。実際に、臨床的評価、呼吸機能評価、画像評価を考慮した複数の定義に基づいて評価した調査では、PPF各群(ガイドライン定義群・INBUILD試験定義群・RELIEF試験定義群)の無移植生存率はIPF群との間に有意な差がみられませんでした(図2)。

図2

ILDの予後改善のために

こうした状況から、「生命予後の改善」はIPFやCTD-ILDの診療に共通した最終的な治療目標として掲げられています(図3)。

図3

IPFやPPFにおける進行性の肺の線維化は不可逆的であり、疾患が進行するほど治療は困難となります。そのため、予後改善を目指すにあたっては、早期診断・早期治療により、早い段階から進行を抑制することが重要です(図4)。

図4

このように早期治療が重視される一方で、臨床において効果の実感しづらさや副作用による治療の継続が課題のひとつとなっています。抗線維化剤ニンテダニブの臨床試験における治療継続率は、治療開始後1年で約8割、治療開始後3年で5割を下回っていました6)

IPF及びPPFに対する治療選択肢 ジャスケイド

そうしたなか、2026年5月、ジャスケイド®錠(一般名:ネランドミラスト)が、IPF及びPPFを対象としたホスホジエステラーゼ4B(PDE4B)に対する選択性の高い阻害剤として承認されました。

そこで、この承認根拠となった臨床成績のひとつとして、PPF患者における有効性・安全性を検討したFIBRONEERTM-ILD試験についてご紹介します。

FIBRONEERTM-ILD試験の概要

国際共同第Ⅲ相試験であるFIBRONEERTM-ILD試験は、日本を含む44ヵ国403施設で実施された多施設、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照比較試験です(図5)。

図5

本試験では、18歳以上のPPF患者1,176例が組み入れられ、1:1:1の割合でプラセボ群、ジャスケイド18mg群、ジャスケイド9mg群にランダム化されました。
主要評価項目は52週時のFVCのベースラインからの絶対変化量であり、重要な副次評価項目は治験期間中のILDの初回急性増悪、呼吸器疾患による初回入院又は死亡のいずれかが最初に発生するまでの期間が複合評価項目として設定されました。これらの各臨床イベントは個別に副次評価項目としても設定されています(図6)。

図6

有効性

本試験の結果、主要評価項目である52週時のFVCのベースラインからの絶対変化量のプラセボ群との群間差はジャスケイド18mg群で67.2mL、ジャスケイド9mg群で81.1mLであり、いずれの群においてもプラセボ群との統計学的な有意差が認められ(それぞれp=0.0002、p<0.0001、MMRM)、ジャスケイドのプラセボに対する優越性が検証されました(検証的な解析結果)(図7)。

図7

重要な副次評価項目である、治験期間中のILDの初回急性増悪、呼吸器疾患による初回入院又は死亡のいずれかが最初に発生するまでの期間(複合評価項目)のプラセボ群に対するハザード比は、ジャスケイド18mg群で0.77、ジャスケイド9mg群で0.88でした。Wald検定におけるp値は、それぞれ0.0602、0.3398で、いずれの群においても有意差が認められず、優越性は示されませんでした(検証的な解析結果)(図8)。

図8

一方、個別の臨床イベントの解析において、死亡までの期間のプラセボ群に対するハザード比は、ジャスケイド9mg群では0.60でした。また、ジャスケイド18mg群では0.48で、52%のリスク低下がみられました(探索的解析)(図9)。

図9

安全性

有害事象の発現割合は、ジャスケイド18mg群で93.1%、ジャスケイド9mg群で93.9%、プラセボ群で94.1%でした。

また、投与中止に至った有害事象の発現割合は、ジャスケイド18mg群で11.3%、ジャスケイド9mg群で9.9%、プラセボ群で11.7%でした(図10)。

図10

主な有害事象の発現割合として、いずれかの群で10%超に認められた有害事象を示します。最もよくみられた有害事象は、下痢(ジャスケイド18mg群36.6%、ジャスケイド9mg群30.8%、プラセボ群25.0%;以下同順)、次いで咳嗽(15.6%、13.5%、15.3%)及び上気道感染(13.0%、10.7%、16.1%)でした(図11)。

図11

また、重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象、死亡に至った有害事象はそれぞれ図12~14のとおりでした。

図12

図13

図14

今回ご紹介したように、IPF及びPPFの生命予後の改善が望まれるなかで、FIBRONEERTM-ILD試験では、ジャスケイドによるFVC低下抑制効果に加えて、死亡リスクの低下への寄与が観察されました。また、有害事象による投与中止率は、プラセボ群11.7%に対し、ジャスケイド18mg群11.3%、9mg群9.9%でした。

なお、ジャスケイドの効能又は効果、用法及び用量は図15のとおりです。
ジャスケイドはIPF及びPPFにおける新たな治療選択肢となりえるのではないかと考えております。

図15

引用

  1. du Bois RM.: Eur Respir Rev 2012; 21(124): 141-146.
      本試験はベーリンガーインゲルハイム社の支援により行われた。
  2. Kim DS. et al.: Proc Am Thorac Soc 2006; 3(4): 285-292.
  3. American Cancer Society. Cancer Facts and Figures 2009. Atlanta, American Cancer Society, 2009.
  4. Bjoraker JA. et al.: Am J Respir Crit Care Med 1998; 157(1): 199-203.
  5. 厚生労働省 令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況 2025.
  6. Wuyts WA. et al.: Lung. 2025; 203(1): 25.
      本試験はベーリンガーインゲルハイム社の支援により行われた。

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P-Mark 作成年月:2026年7月