2型糖尿病のないCKD※患者における早期介入の意義と ジャディアンスの有用性
サイトへ公開:2024年05月30日 (木)
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2型糖尿病のないCKD患者における、心血管イベントリスクを見据えた治療介入意義とジャディアンスの有用性について解説します。

慢性腎臓病ステージがG3bA2の患者さんの治療について、どのように考えますか?

先生は、こちらの患者さんのように、糖尿病はないものの、eGFR が40mL/min/1.73m2と低下していて、尿蛋白(1+)の慢性腎臓病(CKD)ステージがG3bA2患者さんに対するCKD治療をどのように考えますか?
eGFR低下や蛋白尿は心不全や透析開始のリスクになります

eGFRの低下は、心不全のリスク上昇と関連しています。
日本人を含む24コホートを対象とした、ベースライン時に心不全の病歴がない18歳以上の患者105,127例のデータを抽出して行ったメタ解析において、eGFR 95mL/min/1.73m2をreferenceとした時、75mL/min/1.73m2に低下すると心不全のハザード比が増加し始め、45mL/min/1.73m2まで低下すると2を超えることが示されました。

また、糖尿病のない患者でもeGFR60mL/min/1.73m2未満、すなわちeGFRがG3a以降であることは透析開始リスクであり、蛋白尿があると、さらにそのリスクが高くなります。
図は、国内の19〜72歳の外来患者335,778例(このうち糖尿病なし:315,555例)を対象に、糖尿病の有無、eGFRの低下および蛋白尿の有無と、透析開始リスクの関連を評価した結果です。
eGFR≧60mL/min/1.73m2かつ尿蛋白(-)をreferenceとした時、透析開始のハザード比はeGFR≧60mL/min/1.73m2かつ尿蛋白(+)で1.18、eGFR<60mL/min/1.73m2かつ尿蛋白(-)で4.94、eGFR<60mL/min/1.73m2かつ尿蛋白(+)で133.43でした。
SGLT2阻害薬のジャディアンス10mgは新たにCKD※1にも使用可能となりました

2024年、CKD※1治療の選択肢の一つに新たにSGLT2阻害薬のジャディアンス10mgが加わりました。
ジャディアンス10mgは、「2型糖尿病」、「慢性心不全※2」に続き「慢性腎臓病※1」に対して投与可能となりました。
※1 ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。
※2 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。
ジャディアンスは、EMPA-KIDNEY試験において糖尿病合併の有無を問わずCKD患者に対する有効性が示されました

ジャディアンスのCKD※治療薬としてのエビデンスはEMPA-KIDNEY試験で示されました。
EMPA-KIDNEY試験は、腎疾患進行のリスクのあるCKD患者を対象としたジャディアンスの国際共同第Ⅲ相・検証試験です。
※ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。

本試験は、CKD治療薬として初めてアルブミン尿30mg/gCr未満のA1患者を組み入れ、eGFR20mL/min/1.73m2以上の患者を登録した大規模臨床試験です。
また、組み入れられたCKD患者のうち、糖尿病合併のない方は54.2%、ある方は45.8%で、糖尿病合併のない方が半数を超えていました。心血管疾患の既往のない方は73.2%、ある方は26.8%でした。

主要評価項目である腎疾患進行または心血管死の初回発現までの期間において、ジャディアンス10mg群のプラセボ群に対するハザード比は0.73で、イベントリスクが27%低下し、ジャディアンス10mg群の優越性が検証されました(99.83%CI:0.59-0.89、p<0.0001、Cox回帰モデル)。

腎疾患進行または心血管死の初回発現におけるサブグループ解析の結果、ベースラインの糖尿病合併の有無にかかわらずジャディアンス10mg群とプラセボ群の間に有意差が認められました(糖尿病合併:ハザード比0.64、p<0.0001、糖尿病非合併:ハザード比0.83、p=0.0443、いずれも名目上のp値、Cox回帰モデル)。

本試験では、eGFRの年間変化率(eGFRスロープ、負の値が小さいほど、1年あたりのeGFRの低下が少ないことを示す)を検討しています。その結果、ベースラインから最終フォローアップ来院までの全期間のeGFRスロープは、プラセボ群 -2.90に対してジャディアンス10mg群 -2.16であり、2ヵ月目の来院から最終フォローアップ来院までの慢性期のeGFRスロープは、プラセボ群 -2.74に対して、ジャディアンス10mg群 -1.37でした。

また、慢性期において、腎疾患の原因(糖尿病、高血圧性/腎血管性疾患、糸球体疾患およびその他/不明)にeGFRスロープを検討した結果、eGFRスロープの負の値はジャディアンス10mg群でプラセボ群よりも小さかったことが示されました(異質性のp=0.11、名目上のp値)。

安全性については、重篤な有害事象および事前に規定した非重篤な有害事象に限定して収集され、全ての有害事象の発現割合はジャディアンス10mg群で43.9%(1,444/3,292例)、プラセボ群で46.1%(1,516/3,289例)でした。
主な有害事象は、ジャディアンス10mg群で痛風231例(7.0%)、コロナウイルス感染98例(3.0%)、急性腎障害93例(2.8%)等、プラセボ群で痛風266例(8.1%)、急性腎障害117例(3.6%)、コロナウイルス感染107例(3.3%)等でした。また重篤な有害事象は、ジャディアンス10mg群でコロナウイルス感染98例、急性腎障害93例、血中カリウム増加76例等、プラセボ群で急性腎障害117例、コロナウイルス感染107例、血中カリウム増加87例等でした。投与中止、死亡に至った有害事象は表のとおりでした。
ジャディアンスの「慢性腎臓病※」に対する用法及び用量は10mg 1用量のみです

「慢性腎臓病※」に対するジャディアンスの投与用量は10mg 1用量のみです。朝食前または朝食後のどちらにおいても服用可能です。
※ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。
ジャディアンス10mgを、CKD患者さんにお役立てください

慢性腎臓病※の効能又は効果が新たに承認されたジャディアンス10mgを、患者さんの治療にお役立てください。
※ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。