ジオトリフ®錠20mg・30mg・40mg

ジオトリフ®(一般名:アファチニブマレイン酸塩)は、ErbBファミリーを不可逆的に阻害する経口の抗悪性腫瘍剤/チロシンキナーゼ阻害剤です。

製品の主な特徴

製品名ジオトリフ®錠 20mg・30mg・40mg
区分劇薬、処方箋医薬品
適応症EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌
有効成分アファチニブマレイン酸塩

製品の基本情報

組成

販売名ジオトリフ錠20mgジオトリフ錠30mgジオトリフ錠40mg
有効成分アファチニブマレイン酸塩29.56mg(アファチニブとして20mg)アファチニブマレイン酸塩44.34mg(アファチニブとして30mg)アファチニブマレイン酸塩59.12mg(アファチニブとして40mg)
添加剤乳糖水和物、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、クロスポビドン、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、マクロゴール400、酸化チタン、タルク、ポリソルベート80乳糖水和物、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、クロスポビドン、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、マクロゴール400、酸化チタン、タルク、青色2号アルミニウムレーキ、ポリソルベート80

製剤の性状

販売名ジオトリフ錠20mgジオトリフ錠30mgジオトリフ錠40mg
剤形白色~わずかに帯黄白色のフィルムコート錠濃青色のフィルムコート錠淡青色のフィルムコート錠
外形
ジオトリフ錠20mg外形
ジオトリフ錠30mg外形
ジオトリフ錠40mg外形
直径約8.1mm約9.1mm約10.1mm
厚さ約3.6mm約4.1mm約4.5mm
重さ約185mg約277mg約368mg
識別コード識別コード

T20

識別コード

T30

識別コード

T40

EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌

  • EGFR遺伝子変異検査を実施すること。EGFR遺伝子変異不明例の扱い等を含めて、本剤を投与する際は、日本肺癌学会の「肺癌診療ガイドライン」等の最新の情報を参考に行うこと。
  • 本剤の術後補助化学療法における有効性及び安全性は確立していない。
  • がん化学療法歴等について、「臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で適応患者の選択を行うこと。

通常、成人にはアファチニブとして1日1回40mgを空腹時に経口投与する。
なお、患者の状態により適宜増減するが、1日1回50mgまで増量できる。

副作用が発現した場合は、症状、重症度等に応じて、以下の基準を考慮し、休薬、減量又は中止すること。(「重大な副作用」の項参照)

副作用のグレード注1)休薬及び減量基準
グレード1又は2同一投与量を継続
グレード2(症状が持続的 注2)又は忍容できない場合)若しくはグレード3以上症状がグレード1以下に回復するまで休薬する。回復後は休薬前の投与量から10mg減量して再開する 注3)、4)

注1)グレードはNCI-CTCAE 3.0版による。
注2)48時間を超える下痢又は7日間を超える皮膚障害
注3)1日1回20mg投与で忍容性が認められない場合は、投与中止を考慮すること。
注4)一旦減量した後は、増量を行わないこと。

  • 1日1回40mgで3週間以上投与し、下痢、皮膚障害、口内炎及びその他のグレード2以上の副作用が認められない場合は1日1回50mgに増量してもよい。
  • 食後に本剤を投与した場合、Cmax及びAUCが低下するとの報告がある。食事の影響を避けるため食事の1時間前から食後3時間までの間の服用は避けること。(「薬物動態」の項参照)
  • 他の抗悪性腫瘍剤との併用について、有効性及び安全性は確立していない。

  • 間質性肺疾患があらわれることがあるので、初期症状(呼吸困難、咳嗽、発熱等)の確認及び定期的な胸部画像検査の実施等、観察を十分に行うこと。また、必要に応じて動脈血酸素分圧(PaO2)、動脈血酸素飽和度(SpO2)、肺胞気動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)、肺拡散能力(DLco)等の検査を行うこと。(「警告」、「特定の背景を有する患者に関する注意」、「重大な副作用」の項参照)
  • 肝機能障害があらわれることがあるので、本剤投与開始前及び本剤投与中は定期的に肝機能検査を行い、患者の状態を十分に観察すること。(「特定の背景を有する患者に関する注意」、「重大な副作用」の項参照)
  • 重篤な心障害があらわれることがあるので、本剤投与開始前には患者の心機能を確認すること。また、本剤投与中は心症状の発現状況・重篤度等に応じて適宜心機能検査(心エコー等)を行い、患者の状態(左室駆出率の変動を含む)を十分に観察すること。(「特定の背景を有する患者に関する注意」、「重大な副作用」の項参照)

合併症・既往歴等のある患者

腎機能障害患者

  • 重度の腎機能障害のある患者    
    本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。(「薬物動態」の項参照)

肝機能障害患者

生殖能を有する者

妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後2週間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること。(「妊婦」の項参照)

妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験で黄体数、着床数及び生存胎児数の減少並びに着床後胚損失の増加(ラット)、胎児体重の減少、矮小児、四肢の弯曲、大動脈弓及び右又は左頚動脈における過剰血管並びに矮小精巣等の変異(ウサギ)が認められている。(「生殖能を有する者」の項参照)

授乳婦

授乳しないことが望ましい。動物実験で乳汁中へ移行することが認められている(ラット)。

小児等

小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

高齢者

患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下していることが多い。

本剤はP-糖蛋白(P-gp)の基質である。また、in vitro 試験において、本剤は乳癌耐性蛋白(BCRP)の基質であること、及び本剤の代謝への肝薬物代謝酵素P-450の関与は低いことが示唆された。(「薬物動態」の項参照)

併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
P-gp阻害剤
リトナビル、イトラコナゾール、ベラパミル等
(「薬物動態」の項参照)
本剤の血中濃度が上昇し、副作用の発現頻度及び重症度が高まるおそれがあることから、P-gp阻害剤と併用する場合は、本剤投与と同時又は本剤投与後に投与すること。 本剤はP-gpの基質であり、本剤服用前にP-gp阻害剤を投与すると、併用により本剤の血中濃度が上昇することがある。
P-gp誘導剤
リファンピシン、カルバマゼピン、セイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort)等
(「薬物動態」の項参照)
本剤の血中濃度が低下し、本剤の有効性が減弱するおそれがある。 本剤はP-gpの基質であり、併用により本剤の血中濃度が低下することがある。

次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

重大な副作用

その他の副作用

 10%以上1%以上10%未満1%未満頻度不明
皮膚及び皮下組織障害注1)全身性発疹・斑状丘疹性及び紅斑性皮疹(55.5%)、爪囲炎(56.8%)、皮膚乾燥(29.3%)、ざ瘡(20.5%)、そう痒症(19.2%)、ざ瘡様皮膚炎(13.1%)、脱毛症(10.0%)爪の障害、手掌・足底発赤知覚不全症候群、皮膚剥脱、皮膚亀裂、皮膚色素過剰、皮膚潰瘍、多毛症、紅斑過角化、ひび・あかぎれ、膿痂疹、嵌入爪、色素沈着障害脂漏性皮膚炎、後天性魚鱗癬
筋骨格系及び結合組織障害 筋痙縮、背部痛、筋肉痛筋力低下、シェーグレン症候群、開口障害肋骨痛、肩痛
神経系障害 味覚異常、頭痛、感覚鈍麻末梢性感覚ニューロパチー、振戦 
眼障害注2) 結膜炎、眼乾燥、角膜炎、眼瞼炎、霧視、眼脂、白内障眼瞼障害、睫毛乱生、硝子体剥離、結膜出血、角膜びらん、後天性涙腺炎、虹彩毛様体炎、網膜変性眼痛
耳及び迷路障害  耳鳴 
精神障害 不眠症激越不安
胃腸障害下痢(80.8%)、口内炎(38.4%)、悪心(17.9%)、嘔吐(17.0%)、口唇炎(12.2%)口内乾燥、消化不良、腹痛、便秘、胃炎、腹部膨満、上腹部痛、肛門周囲痛、腹部不快感歯肉炎、口唇乾燥、肛門の炎症、痔核、心窩部不快感、舌炎、口唇症口唇腫脹、食道炎、腸炎、小腸炎、大腸炎、肛門周囲炎
生殖系及び乳房障害   萎縮性外陰腟炎
代謝及び栄養障害食欲減退(20.5%)低カリウム血症、脱水低ナトリウム血症、高尿酸血症 
心臓障害   上室性期外収縮
血管障害 高血圧ほてり低血圧、血栓症
呼吸器、胸郭及び縦隔障害鼻出血(13.1%)鼻の炎症、鼻漏、鼻乾燥、口腔咽頭痛発声障害、鼻閉、湿性咳嗽、しゃっくり口腔咽頭不快感
腎及び尿路障害 蛋白尿血尿、尿中血陽性腎機能障害、排尿困難
感染症及び寄生虫症 感染症(皮膚、尿路、鼻、咽頭、気管支、耳、爪)、毛包炎、膀胱炎、蜂巣炎、真菌感染症(皮膚、足部)、帯状疱疹ウイルス感染、鼓膜炎、敗血症 
血液及びリンパ系障害 貧血、白血球減少症、好中球減少症リンパ球減少症、鉄欠乏性貧血好酸球増加症
一般・全身障害及び投与部位の状態粘膜の炎症(28.8%)、疲労(13.5%)発熱、末梢性浮腫、浮腫炎症、顔面浮腫、胸部不快感、倦怠感、粘膜乾燥、粘膜障害悪寒
臨床検査肝機能検査値異常(AST、ALT上昇等)(14.0%)、体重減少(10.5%)血中アルカリホスファターゼ増加血中クレアチニン増加、アミラーゼ増加、CK上昇、血中ビリルビン増加、トロポニンT増加、総蛋白減少、血中アルブミン減少、心電図T波逆転尿中白血球陽性、血中尿素増加、血中乳酸脱水素酵素増加、CK-MB上昇
傷害、中毒及び処置合併  挫傷創し開

注1)必要に応じて皮膚科を受診するよう患者に指導すること。
注2)直ちに眼科的検査を行うなど適切な処置を行うこと。

薬剤交付時の注意

  • PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔を起こして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
  • 服用直前にPTPシートから取り出すよう指導すること。(「取扱い上の注意」の項参照)

非臨床試験に基づく情報

細菌を用いた復帰突然変異試験において、陽性が認められているが、ヒトリンパ球を用いた染色体異常試験、Mutaマウスを用いた遺伝子突然変異試験並びにラットを用いた小核試験及びコメットアッセイでは陰性であった。

血中濃度

日本人非小細胞肺癌患者12例に本剤20、40、50mgを空腹時(服薬前2時間及び服薬後1時間は絶食)単回経口投与若しくは1日1回28日間反復経口投与したときの血漿中未変化体の薬物動態パラメータ及び血漿中未変化体濃度推移を以下に示す。AUC0-∞及びCmaxは、本剤20~50mgの範囲で用量比をわずかに上回って増加する。投与開始後8日目には定常状態に到達していると考えられ1)、本剤の累積係数はAUC0-∞では2.8、Cmaxでは2.1であった。

表 本剤経口投与後のアファチニブの薬物動態パラメータ

単回投与反復投与
幾何平均値 
(% gCV)a)
20mg  
N=3
40mg  
N=3
50mg  
N=6
幾何平均値 
(% gCV)a)
20mg  
N=3
40mg  
N=3
50mg  
N=5
AUC0-24 
[ng・h/mL]
147(84.5)299c)(6.01)539(59.0)AUCτ,ssd) 
[ng・h/mL]
409(16.5)1240(9.73)1010(71.5)
Cmax[ng/mL]12.4(101)18.9(45.8)44.4(60.6)Cmax,ss 
[ng/mL]
26.9(24.9)83.3(30.1)66.8(71.6)
tmaxb)[h]3.87(3.00-4.98)4.05(2.00-8.95)3.00(2.02-4.95)tmax,ssb)[h]3.97(2.92-4.95)2.97(1.98-4.02)3.00(0.983-5.03)
t1/2[h]21.3(63.1)37.9c)(24.9)14.8(20.0)t1/2,ss[h]38.5(14.4)40.4(11.9)33.5(22.2)

a)gCVは幾何変動係数を表す 
b)中央値(最小値-最大値) 
c)N=2 
d)τは24時間、ssは定常状態のパラメータを表す

図 本剤経口投与後の血漿中アファチニブ濃度推移(算術平均±SD)

図 本剤経口投与後の血漿中アファチニブ濃度推移(算術平均±SD)

吸収

  • 食事の影響 
    固形癌患者に本剤40mgを高脂肪食摂取後に単回経口投与したとき、空腹時投与に比べてAUC0-∞及びCmaxはそれぞれ39及び50%低下した2)(外国人データ)。(「用法及び用量に関連する注意」の項参照)

分布

ヒトにおけるin vitro血漿蛋白結合率は95%であった3)。本剤はヒト血清アルブミン及びα1-酸性糖蛋白(AAG)と結合し、AAGとの結合は蛋白質濃度に依存していた4)。また、ヒトin vitroにおける14C標識アファチニブの血球移行(Cc/Cp)は、1.02~2.21であった3)

代謝

アファチニブはin vivoにおいて酵素を介する酸化的代謝はほとんど受けず、血漿中の主要な代謝物は蛋白質との共有結合付加体であった5)。(「相互作用」の項参照)

排泄

  • 14C標識アファチニブ15mg注)溶液を健康成人に経口投与したとき、投与放射能の85.4%が糞便中に、4.3%が尿中に排泄された6)。回収された放射能の約88%(糞便中:85.6%、尿中:2.5%)が未変化体であった5)。(外国人データ)
  • In vitroにおいて本剤はP-糖蛋白(P-gp)及び乳癌耐性蛋白(BCRP)の基質であることが示唆されている7)~9)。(「相互作用」の項参照)

特定の背景を有する患者

腎機能障害者

中等度並びに重度腎機能障害被験者(各8例)に本剤40mgを単回投与した場合、腎機能正常被験者(各比較対象群に対してそれぞれ8例)に比べて中等度腎機能障害(eGFR:30~59mL/min/1.73m2)を有する群ではAUC0-lastは22.2%(90% CI:95.7、156.0)、Cmaxは1.2%(90% CI:72.9、140.3)の上昇が認められ、重度腎機能障害(eGFR:15~29mL/min/1.73m2)を有する群では、AUC0-lastは50.0%(90% CI:105.3、213.7)、Cmaxは21.7%(90% CI:90.8、163.2)の上昇が認められた(外国人データ)。(「特定の背景を有する患者に関する注意」の項参照) 
また、本剤単独投与を受けた癌患者927例(血漿中アファチニブ濃度4460時点)を対象に母集団薬物動態解析を実施し、内因性要因及び外因性要因が本剤の薬物動態に及ぼす影響を評価した10),11)。癌患者927例のうち、軽度の腎機能障害患者(クレアチニンクリアランス50mL/min以上80mL/min以下)は528例(2051時点)、中等度の腎機能障害患者(30mL/min以上50mL/min未満)は161例(554時点)、重度の腎障害患者(30mL/min未満)は10例(21時点)であった。クレアチニンクリアランスが79mL/min(中央値)の患者と比較して、60mL/min及び30mL/minの患者ではAUCτ, ssはそれぞれ13%及び42%の上昇、90mL/min及び120mL/minの患者ではそれぞれ6%及び20%の低下が示された。

肝機能障害者

軽度(Child-Pugh分類A)又は中等度(Child-Pugh分類B)の肝機能障害者に本剤50mgを単回経口投与したとき、健康被験者と比較して曝露量に有意な変化はみられなかった10),12)。重度(Child-Pugh分類C)の肝機能障害のある患者における薬物動態は検討されていない。(外国人データ)(「特定の背景を有する患者に関する注意」の項参照)

薬物相互作用

リトナビル

本剤20mgの投与1時間前にP-糖蛋白(P-gp)の阻害剤であるリトナビルを投与したときの本剤のAUC0-∞及びCmaxは48%及び39%上昇した13)。一方、本剤40mgとリトナビルを同時併用したとき、AUC0-∞及びCmaxの上昇はそれぞれ19%及び4%、本剤投与6時間後にリトナビルを併用投与したときにはそれぞれ11%及び5%であった14)。(「併用注意」の項参照)

リファンピシン

本剤40mg服用前にP-gpの誘導剤であるリファンピシンを投与したとき、本剤のAUC0-∞及びCmaxは、それぞれ34%及び22%低下した15)。(「併用注意」の項参照) 
注) 承認された用法・用量は、「通常、成人にはアファチニブとして1日1回40mgを空腹時に経口投与する。なお、患者の状態により適宜増減するが、1日1回50mgまで増量できる。」である。

有効性及び安全性に関する試験

国際共同第Ⅲ相臨床試験成績(LUX-Lung 3)

化学療法未治療のEGFR遺伝子変異(Exon19の欠失変異(Del19)、Exon21のL858R変異等)陽性の非小細胞肺癌(腺癌)患者を対象に、本剤40mgを1日1回空腹時(食事の1時間以上前又は食後3時間以降)投与した際の有効性及び安全性について、ペメトレキセド+シスプラチン(PEM+CDDP)の併用療法を対照として評価した。有効性評価対象例は345例(本剤群230例、PEM+CDDP群115例)であり、このうち83例(本剤群54例、PEM+CDDP群29例)が日本人であった16)
主要評価項目である独立判定委員会判定による無増悪生存期間(PFS)の中央値は、本剤群で11.1カ月、PEM+CDDP群で6.9カ月であり、本剤群のPFSはPEM+CDDP群と比較して有意に延長した(ハザード比0.58、95%信頼区間:0.43-0.78、p値=0.0004、両側層別ログランク検定)。また、EGFR遺伝子変異の種類(Del19、L858R、その他)別による部分集団解析の結果は、下表のとおりであった。

図 無増悪生存期間のKaplan-Meier曲線


図 無増悪生存期間のKaplan-Meier曲線

表 EGFR遺伝子変異の種類別によるPFS(中央値)の結果

EGFR遺伝子変異 本剤群 PEM+CDDP群 ハザード比 95%信頼区間
Del19 13.7カ月(n=113) 5.6カ月(n=57) 0.28 0.18-0.44
L858R 10.8カ月(n=91) 8.1カ月(n=47) 0.73 0.46-1.17
その他 2.8カ月(n=26) 9.9カ月(n=11) 1.89 0.84-4.28

副次評価項目である全生存期間(OS)(2013年11月14日データカットオフ)の中央値は、本剤群で28.2カ月、PEM+CDDP群で28.2カ月であった(ハザード比0.88、95%信頼区間:0.66-1.17)。
安全性評価対象229例(日本人54例を含む)中228例(99.6%)に副作用が認められ、主な副作用は、下痢218例(95.2%)、発疹141例(61.6%)、爪囲炎130例(56.8%)等であった。

作用機序

本剤は、野生型及び遺伝子変異を有するEGFR(ErbB1)だけではなく、HER2(ErbB2)及びHER4(ErbB4)のチロシンキナーゼ活性を不可逆的に阻害し、ErbB受容体ファミリー(EGFR、HER2、HER3(ErbB3)並びにHER4が形成するホモ及びヘテロダイマーの活性を阻害することにより、受容体からの異常シグナル伝達を遮断し、腫瘍細胞の増殖を抑制する17)~20)

抗腫瘍効果

本剤は、in vitro試験において、非小細胞肺癌由来のEGFR遺伝子野生型を有するH1666細胞株、EGFR遺伝子のL858R変異を有するNCI-H3255細胞株及びL858R変異とT790M変異を有するNCI-H1975細胞株の増殖を抑制した21),22)

一般的名称:アファチニブマレイン酸塩(Afatinib Maleate)(JAN)

化学名:(2E)-N-[4-(3-Chloro-4-fluoroanilino)-7-{[(3S)-oxolan-3-yl]oxy}quinazolin-6-yl]-4-(dimethylamino)but-2-enamide dimaleate

分子式:C24H25ClFN5O3・2C4H4O4

分子量:718.08

性 状:白色~黄褐色の粉末である。本品は水又はジメチルスルホキシドに溶けやすく、メタノールにやや溶けにくく、エタノール(95)に溶けにくい。

化学構造式:

化学構造式

分配係数:log P=4.7(pH9以上)、log D=3.8(pH7.4)

本剤は湿気と光に不安定なため、未使用の場合はアルミピロー包装のまま保存し、開封後は湿気と光を避けて保存すること。(「適用上の注意」の項参照)

<ジオトリフ錠20mg>  
14錠[7錠(PTP)×2(乾燥剤入り)]

<ジオトリフ錠30mg>  
14錠[7錠(PTP)×2(乾燥剤入り)]

<ジオトリフ錠40mg>  
14錠[7錠(PTP)×2(乾燥剤入り)]

  1. 社内資料:国内第Ⅰ/Ⅱ相試験(LUX-Lung 4)薬物動態の検討(第Ⅰ相)(2014年1月17日承認、CTD 2.7.2.2)
  2. 社内資料:海外第Ⅰ相試験 食事の影響(2014年1月17日承認、CTD 2.7.1.3)
  3. 社内資料:非臨床薬物動態試験(血漿蛋白結合及び血球移行)(2014年1月17日承認、CTD 2.6.4.4)
  4. 社内資料:非臨床薬物動態試験(血漿蛋白結合)(2014年1月17日承認、CTD 2.6.4.4)
  5. 社内資料:in vitroにおける代謝の検討(2014年1月17日承認、CTD 2.6.4.5)
  6. 社内資料:臨床薬物動態試験(2014年1月17日承認、CTD 2.7.2.2)
  7. 社内資料:非臨床薬物動態試験(トランスポーター)(2014年1月17日承認、CTD 2.6.4.5)
  8. 社内資料:非臨床薬物動態試験(トランスポーター)(2014年1月17日承認、CTD 2.6.4.5)
  9. 社内資料:非臨床薬物動態試験(トランスポーター)(2014年1月17日承認、CTD 2.6.4.5)
  10. 社内資料:母集団薬物動態解析(2014年1月17日承認、CTD 2.7.2.2)
  11. 社内資料:母集団薬物動態解析(2014年1月17日承認、CTD 2.7.2.2)
  12. 社内資料:肝機能障害者における薬物動態の検討(2014年1月17日承認、CTD 2.7.2.2)
  13. 社内資料:リトナビルとの相互作用(2014年1月17日承認、CTD 2.7.2.3)
  14. 社内資料:リトナビルとの相互作用(2014年1月17日承認、CTD 2.7.2.3)
  15. 社内資料:リファンピシンとの相互作用(2014年1月17日承認、CTD 2.7.2.3)
  16. 社内資料:国際共同第Ⅲ相試験(LUX-Lung 3)(2014年1月17日承認、CTD 2.7.3.2、2.7.3.3)
  17. 社内資料:薬効薬理の検討(受容体結合実験)(2014年1月17日承認、CTD 2.6.2.2)
  18. 社内資料:薬効薬理の検討(EGFR、HER2キナーゼ等に対する作用)(2014年1月17日承認、CTD 2.6.2.2)
  19. 社内資料:薬効薬理の検討(種々の蛋白質キナーゼに関する選択性)(2014年1月17日承認、CTD 2.6.2.2)
  20. 社内資料:薬効薬理の検討(HER4キナーゼアッセイ)(2014年1月17日承認、CTD 2.6.2.2)
  21. 社内資料:薬効薬理の検討(EGFR変異株に対する阻害作用)(2014年1月17日承認、CTD 2.6.2.2)
  22. Li D. et al.:Oncogene. 2008;27(34):4702-4711

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