代謝性疾患

海外ガイドライン解説

サイトへ公開:2026年06月10日 (水)

2024年に欧州肝臓学会(EASL)、欧州糖尿病学会(EASD)、欧州肥満学会(EASO)から合同で発表されたガイドラインでは、NAFLD/NASHという疾患名がMASLD/MASHへと変更され、それに伴い診断基準も変更されました。今回は、疾患名変更の背景や診断基準の変更に伴う影響、ガイドラインにおける肝疾患の扱いなどについて、2026年に米国糖尿病学会(ADA)から発表されたガイドラインの内容も含めてご紹介します。

1.EASL-EASD-EASO Clinical Practice Guidelines on the management of MASLD

1)「NAFLD/NASH」から「MASLD/MASH」への疾患名の変更・診断基準の変更

 2024年6月に欧州肝臓学会(EASL)、欧州糖尿病学会(EASD)、欧州肥満学会(EASO)の3学会が合同で発表した『EASL-EASD-EASO Clinical Practice Guidelines on the management of MASLD』では、脂肪肝の一種である「Non-alcoholic fatty liver disease(NAFLD)」および「Non-alcoholic steato hepatitis(NASH)」という名称が、「Metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease(MASLD)」および「Metabolic dysfunction-associated steatohepatitis(MASH)」に変更され、わが国ではそれぞれ「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」から「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」「代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)」へ変更されました1)
 またそれに伴い診断基準についても、画像検査または生検により脂肪肝が認められ、少なくとも1つの心代謝系危険因子(肥満、高血圧など)があり、かつ有害なアルコール摂取(女性で1日20g超え、男性で1日30g超え)がない場合、と変更されました1)
 疾患名変更の背景として、従来のNAFLDに含まれる「非アルコール性」という文言は「アルコールが原因ではない」という除外診断に基づく名称であり、疾患の要因である「代謝性機能障害」を十分に反映できていなかったことがあります2)

図1 MASLDの診断フロー

1)より引用

2)疾患定義の変更に伴う、実臨床への影響

 疾患名および診断基準の変更に伴い、以前はNAFLDと診断されていた患者さんでもMASLDには該当しないケースなどが想定される点に注意が必要です。たとえば、脂肪肝が認められるものの心代謝系危険因子が1つもない患者さんは、従来NAFLDと診断されていましたがMASLDからは除外され、「成因不明のSLD」と診断されることになります1)
 また「軽度~中程度の飲酒量」の境界が曖昧であったため、「中程度の飲酒量」(女性で20g/日超え50g/日以下、男性で30g/日超え60g/日以下)は従来NAFLDに含まれていましたが本ガイドラインではMASLDからは除外され、「代謝機能障害アルコール関連肝疾患(MASLD and increased alcohol intake:MetALD)」と診断されます1)
 なお、診断基準が変更されたものの、従来NAFLDの定義の下で得られた臨床試験などのエビデンスはMASLD患者さんに対しても適用可能であると報告されています3)

3)代謝性疾患と肝臓イベントリスクの関係

 本ガイドラインでは代謝性疾患と肝臓イベントリスクの関係についても明記されており、2型糖尿病、肥満症といった代謝性疾患や心代謝系危険因子はMASLDの進行に影響を与え、肝硬変や肝がんへの進展リスクにつながるとされています4)

4)MASLDと心血管イベントリスクの関係

 また一方で、MASLDを罹患している患者さんでは非致死的な心血管疾患5)や冠動脈疾患6)、心不全7)といった心血管イベントのリスクが高いことが報告されています1)。このように代謝性疾患と肝臓イベントリスクの相互関係がガイドラインで明記されるようになったことから、単一の臓器や疾患だけでなく全身に目を向けて診療を行うことの重要性がうかがえます。

2.ADA Standards of Care in Diabetes-2026

 また、2026年1月に米国糖尿病学会(ADA)から『ADA Standards of Care in Diabetes-2026』が発表されました。本ガイドラインはMASLDのスクリーニング方法および肝臓専門医への紹介基準が明記されたことが特徴的であり、2型糖尿病などを伴う肥満症患者に対する初期評価として、非侵襲的な肝線維化の指標であるFIB-4 indexが推奨されています8)。FIB-4 indexが1.3未満の場合はかかりつけ医による管理、2.67を上回る場合は専門医への紹介、1.3以上2.67以下であってもエラストグラフィー検査による肝硬度測定(liver stiffness measurement:LSM)の結果が8.0kPa以上の場合は専門医へ紹介、というように紹介基準が明確化されました8)

図2 MASLDのスクリーニングおよび肝臓専門医への紹介基準

8)より引用

 ここまでご紹介したように、EASL-EASD-EASOならびにADAのガイドラインでNAFLD/NASHからMASLD/MASHへ疾患名・診断基準が変更されたことに伴い、代謝性疾患の診療において肝臓への注目度が高まっているといえます18)
 今後、わが国でも診断基準の変更後初のガイドラインの改訂が待たれますが、本サイト内でも解説コンテンツを公開予定ですので、ぜひご覧ください。

【参考文献】

  1. European Association for the Study of the Liver (EASL), et al. J Hepatol. 2024; 81: 492-542.
  2. Rinella ME, et al. J Lipid Res. 2024; 65: 100485.
  3. Younossi ZM, et al. J Hepatol. 2024; 80: 694–701.
  4. Younossi ZM. J Hepatol. 2019; 70: 531–44.
  5. Mantovani A, et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2021; 6: 903–13.
  6. Toh JZK, et al. Clin Gastroenterol Hepatol. 2022; 20: 2462–73.e10.
  7. Mantovani A, et al. Gut. 2023; 72: 372–80.
  8. American Diabetes Association Professional Practice Committee for Diabetes. Diabetes Care. 2026 ; 49(Suppl.1) : S61-88.

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